そもそもの馴れ初めは…なんて、聞かれても微妙過ぎて答えられない。
と言うか、恥ずかしくて言えない。
と言っているのに、全く聞いてれない女四人に囲まれて、私は今まさに袋の鼠。
そう…あの時も袋の鼠だったなぁ…。
あぁ、ほろ苦過ぎて涙が…。
「ちょっと、思い出し笑いしてないで早く教えてくださいよ。」
「ええ!?笑ってないよ、泣いてるんだよ。」
「まだお酒が足りないって言うんですか?じゃ、白ワインボトルで追加しますね!」
「や、ダメ、ボトル追加とか何考えてるの?みんな白ワイン飲まないじゃん!」
「やっぱりビールだよね、ビール!じゃ、ピッチャーで…」
「ビールそんなに飲めないんだってば!た、助けてまみさん!」
「早く言った方が身のためだと思うよ。」
「ま、まみさんまでっ!?」
「うん、私も聞きたいもん。」
「「「ですよねー!!」」」
落ち着きながら烏龍茶を一口飲むまみさんに、綺麗にハモる三人娘、みずき、久雨、まる。
くそぅ、言うしかないのか…、ないのか?
いやっ、そんな期待されても…。
「期待されても困るよ!期待されるような何かなんて何もないんだからぁぁぁ!!」
私の叫びが、夜の居酒屋の喧騒に吸い込まれていく。
久しぶりにまみさんに飲みに誘われて、喜んでついてくれば…こんな罠が仕掛けてあっただなんて…!!
土方部長とのお付き合いを社内にバラしてからずっと、何かある度に馴れ初めを聞き出そうとしてきた給湯室三人娘も居るなんて聞いてない!聞いてない、聞いてないよー!
「しょうがないですね…。じゃ、部長に直接聞いてみます。」
「…いや、ダメだ、それもダメ!みずきちゃんなら本当に聞きに行きそうで怖いわぁ!」
「行きますよ、当然です。」
「てか、みんな彼氏に聞けば良いじゃない。」
「「「そんな事聞けないデスってぇ。」」」
そこもハモるんかいっ。
もーイイじゃん、聞いてくれよ、なんで聞けないんだよ。
「聞いてよ、なんで聞けないのさ?」
「だって、土方部長の事ですよ!?平助くんが分かるとは思えないっていうか…。」
「沖田さんなら答えてくれるんじゃない?」
「嘘か本当か分からないですけどね、ははははっ」
みずきちゃん、笑いが渇いてるよ。。
「で、のゆちゃんは自分から告白したの?」
「そんな事できないよ!部長からだよ!」
「「「…。」」」
「あ…」
墓穴…。
あぁ、みんなのニヤニヤした笑顔が…。
もう、帰りたい、どんなに飲んでも酔えない夜だよ。
「じゃ、お疲れ様でした。」
カバンに手を伸ばして席を立とうとした私の腕を、三人娘がガッシリと捕らえた。
ちなみに、バッグはまみさんが遠ざけている…あ、自分のバッグに挟んだ…。
「どんな風に押し倒されたんですか?」
「そもそも、どうしてそんな事に?」
「家ですか?ホテルですか?会社ですか!?」
まるちゃん、頼もしい反応だな。
「て言うか、何で押し倒された限定なのさ!」
「で、いつから?」
一番冷静な質問に、私は再び腰を落ち着けてから答えた。
「三人の研修の頃…かな。」
「意外と長いんですね。」
「…そうだね、そう言われてみれば。」
改めて、関係の長さを実感した。
グラスに残っていた白ワインをぐぃと飲み干して、店員さんにお代わりを要求。
「分かったよ。その代わり、長いよ、しっかり聞きなさいよ!」
うん、と頷くみんなを見渡してから、私は鼻息を荒く吐き出した。
「そもそもね、私の同期が土方部長を狙ってたの。私は協力させられた、と言うか利用された、と言うかだね、あ、思い出したらまた腹立ってきた、あの女…。」
そう、そもそもあの女のせいだ。
いやしかし、今となってはあの女のお陰…とも言えるのか。




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