そして、私の恐怖の日は始まった。
出来た書類を提出する為に部長の元を訪れると、部長は顔を上げずに手を差し出した。
差し出された手に書類を乗せると、やっと顔を上げた部長はしかし、こちらを見ずに書類を確認する。
「よし。じゃあこれを山南さんに渡せ。」
「はい。…あの。」
「渡せば分かる。」
「はい。それで、あの…。」
受け取った書類を胸に抱きしめたまま立ち去らない私を、やっと部長が見た。
と言うか、これ、睨んでるよね…、うわこわっ泣きそう。
「あああああの、ごご趣味は?」
「…は?」
もーぅ、お見合いじゃないんだから、何その質問の仕方!間違えた、完全に出だしを間違えた!
すごい不審そうな目で見られてるよ、怖いよぉ…。
「行け。」
「はい、行ってきます。」
うわぁ、ゴミ虫を見るような目って、ああいうのを言うのかな…。
くそ、何で私が同期のためにこんな目で見られるようなハメに陥らなきゃいけないの、自分で聞いてよね、ホント…。
涙目になりながら、俯いて部長の元を去ろうとした私の背後に人の気配がしたと思ったら、後頭部を優しく叩かれた。
短い吐息つきで。
と言うか、溜息か、これは。
「趣味は仕事だ。」
ぶっきらぼうに言うと、土方部長は私を追い越して行ってしまった。
島田さんの席へと向かっていく。
……あれ、もしかして、答えてくれた…のか?
え、でも趣味が仕事って、流されたってこと?
いやでも、土方部長の事だから、あり得ると言うか…。
と、とりあえずこれ、ミッションクリアじゃない!?
や、答えてくれると思わなかった…!
凄い嬉しい!!




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