「飯を食われても、美味しいって言われたくらいで満足したり、知らない奴らが大勢押し寄せてきても文句も言わずに招き入れて、更には自分で買出ししてまでもてなしたり・・・。」
「だから、土方さんのお友達でしょう?知らない人かもしれないけれど、間接的には友達です。」
「その俺も、元々は知らない人だろうが。」
「良いんですよ、そこは。自分が好きで拾って帰ったんですから。」
「説教しても、怖がらねえでヘラヘラしてるし・・・。」
「えー・・・、その説教だって、私の事を想っての言葉だから、嬉しくなっちゃうんですよね〜。」
「・・・・・・悪かったな。」
「・・・はぇ?」
私が説教されるはずだったのでは?
何故、土方さんが謝っているのだろうか・・・・・・。
コロッケを全て食べ終えて、箸を置いた私に向かって、土方さんが頭を下げた。
「あいつら、俺がここに通ってるって知って、どんな場所なのか見たかっただけだとは思うが・・・、迷惑をかけたな。」
「・・・ビックリしましたけど、寂しいクリスマスを送ってたんで、少し気がまぎれましたよ。」
それも、買出しに行くまでの一瞬だったけど・・・。
「それに・・・、新八が変な勘違いして、嫌なところを見せちまったらしい。」
「嫌なところ?」
新八と言うのは、多分あの女性ではないし・・・、嫌なところは確かに見たけど、新八って人は関係無いような・・・。
「ったく、こんな格好つかねえのは、初めてだよ。」
「え?土方さん、私の目の前に落ちてたときから、格好ついた時ありました?」
「・・・そうだよな、最初からそうだったから、なんかお前の前では気を張らないで済んで、楽だったんだよ。」
楽な女・・・。
ええ、なんせ安眠枕ですもんねー。
あ・・・、さっきの女性の腕を掴んでたところを思い出して、心がささくれ立った・・・。
「だから、今日くらい少し格好つけようと思ったが・・・・・・、まあ、いいか。お前だしな。」
「私だと、何がどう良いんですか?」
何となく馬鹿にされたような気がして唇を尖らせると、テーブル越しに土方さんの顔が迫ってきて、軽く唇が触れた。
「お前に買ったプレゼント、新八が勝手に千鶴に・・・あー、部下にあげちまったみたいで・・・。人がつけた物なんかあげられねえから、今度違うのを贈る。」
一瞬の触れ合いに思考を奪われている間に、更に言葉を畳み掛けられて、私の頭は理解不能に陥っていた。
瞳を見開いて、土方さんを見つめて・・・、へらっと笑って首を傾げると、土方さんが横に移動してきて、ギュッと抱きしめられた。
「まぁ、なんだ・・・。俺はお前と居ると安心するんだよ。夜もぐっすり眠れるし。抱き心地が良いからかと思ってたが、お前だからだって気づいたんだよ。肩肘張らなくて良いのに、可愛い、抱きたい、愛しいと思える女なんて、早々出会えるもんじゃねえからな。」
「・・・え?なに、今の状況を説明して欲しいんですけど・・・。」
「だったら、最後までちゃんと聞け。」
身体中に、土方さんの熱が回りだす。
恥ずかしいのに、嬉しいけれど、意味が分からなくて戸惑ってしまう。
「最初は、本当に眠りたいから来てた、まぁ、利用させてもらってたんだが・・・、そのうちに、お前と過ごす時間も大事に思えてきたんだ。飯も美味い、くるくるとよく働く、少し自分勝手で押し付けがましいところもあるが、それもお前なら嫌じゃねえ。くだらない話でも聴いていたいし、会話が無くても居心地が良い。夜、抱きしめて眠ってる間、何度かこのまま襲ってやろうかと思うようになってきて・・・。」
えー・・・?
ただの安眠枕にムラムラしたって事?
えー・・・・・・?
それって、女として見てくれていたって事?
「まぁ、その、なんだ・・・・・・。お前の人生、俺にくれ。」
「・・・・・・え?」
人生を、くれ?
それって・・・・・・?
「え?付き合ってとかじゃなくて、人生をくれ?」
「まあ、最初は付き合いで良い。だが、俺はお前と過ごした約二ヶ月で、家庭ってもんを味わったような気がした。だから・・・、今すぐ結婚でも良いと思ってる。」
「ぷ、ぷ、ぷ・・・プロポーズ!?」
「そうなるな。」
「そうなるなって・・・!!」
抱きしめられて、押し付けられている胸板から顔を上げて土方さんを見つめると、そこには嘘でも騙しでもない、真剣な顔があった。
「人のこと、一足飛びの思考とか言っておきながら、土方さんだって相当ですよね?」
「ちゃんと熟考したよ。本当にお前で良いのかってな。」
「・・・失礼な熟考ですねぇ。」
へらっと笑いながら文句を言う頬に手を当てられて、私は更にふにゃりと笑った。
「返事は?」
「この状況で、逃げていないのが返事です。」
「俺はちゃんと言ったが・・・?」
「・・・・・・はい。とりあえず、デートとかしてみて、もっとお互いよく知ってから、結婚を考えましょう。」
「・・・じゃあ、初デートで婚約指輪を買いに行くか。」
「それじゃあ私の意志が・・・」
文句を言う私の言葉を唇で塞いで、土方さんが更に強く抱きしめてくれた。




二人でケーキを食べた後、寝室に置いてあったプレゼントを渡した。
「どうです?嬉しいでしょう!流石にパンツ一丁じゃ寒いからね。」
ルンルンで言う私に向かって、土方さんは、私の彼氏であり将来の旦那さんは、妖艶な笑みで答えた。
「これからは、パンツもパジャマも必要ねえんじゃねえか?どうせ着たって脱ぐだろ。」
「え!?・・・・・・お、終わったら着ましょうよ・・・。」
「朝までに終わればな。」
妖艶な笑みに飲まれて、思わず逃げ腰になった私の手を、土方さんは素早く掴んで、自分へと引き寄せた。






メリー クリスマス!!


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