コンビニに飛び込んで、買い物籠を持って、そこで息を整え始めて、それでも乱れた息は中々治まらなかった。
あの可愛らしい女性が、土方さんが買ったプレゼントのネックレスをして、土方さんに腕を握られて・・・。
なんか、見ちゃいけない場面を見ちゃった気がして、胸が痛くて、訳が分からなくなっちゃった・・・。
部下って言ってた。
それって、まだ彼女じゃなかったってこと?
あのプレゼントを渡して、彼女にしようとしてたって事?
そしたら、もう、土方さんがうちに泊まる事は無いよね・・・。
買ったパジャマとか、パンツとか・・・。
あ、れも、プレゼントだし、家で使ってもらえばいいんだよね?
・・・他の女からのそんなプレゼント、果たして要るのかな・・・?
もう、よく分からないよ・・・。
あー、でも、失恋だ、失恋。
やっぱり失恋。
・・・でも、あの男の人たちが勝手に彼女に渡しちゃっただけで、もしかしたら私へのプレゼントかもしれないじゃない!
・・・えー、でも、土方さんてば、彼女の腕を掴んでたし・・・。
そもそも、抱き締めて寝る癖があるんだから、寝てる時に傍に居る人なら、誰でも掴んで引き寄せるんじゃ・・・?
・・・・・・あ、それだと、別に私じゃなくても良いってことじゃん・・・。
・・・・・・。
良いほうに考えようとしても、悪いほうに考えが転がってっちゃうよ・・・。
賢二の言うとおりかな・・・。
安眠枕。
それでも良いと思ってたのに、どっかで欲が出てたんだな〜・・・。
う〜、良い笑いものだよ。
思考がぐるぐるしつつも、とりあえずひと段落、落ち着いたところで、ビールを籠に入れるために移動した。
冷蔵庫の扉にうつった自分の顔・・・。
寒さで鼻の頭が赤くなっていた。
赤鼻のトナカイは、みんなの笑いものだって言いたいのかっ!?
自分の鼻を持ち上げて、トナカイではなく豚にしてから、扉を開けてビールを籠に放り込んだ。





家に着いて、ドアを開けた私は、出てくるまでの賑やかさが無い事に気がついた。
靴は乱雑に脱ぎ散らかされたままなのに・・・。
不思議に思いながらリビングへと入ると、そこには何故か正座させられた男性たち・・・。
「ど、どうしたんですか?」
しょんぼりと項垂れたり、機嫌悪そうに顔を背けていたりする人たちの前に立ちはだかるのは、土方さんの背中。
「名前!!」
「へ?」
「お前もお前だ!何で知らない奴らを家に入れるんだ!しかも、そいつらを残して買い物に行くとか・・・、こんな時間に、一人で!お前は馬鹿か!!」
「え〜〜〜、状況分からないのに突然怒られた〜。」
「知らない奴を家に入れるなって、言っただろうが!」
「でも、土方さん一緒に居たし・・・。」
「家の中で好き勝手されて、何で文句も言わずに、買出しまでしてんだ!」
「だって、みんなこの辺の地理分からないでしょう?」
「女一人でこんな時間に出歩いてんじゃねえ!」
「みんな結構出歩いてるってばぁ・・・。」
何でみんなが正座で項垂れているのか、大体今の流れで把握した私は、思わずへらっと笑ってしまったら、土方さんが盛大に溜息を吐いて顔を手で覆った。
「みんなも怒られちゃったんですね〜。」
「全く、土方さんてばうるさいうるさい。」
「総司!!とにかく、てめえら全員帰れ!」
物凄い剣幕の土方さんに圧されて、全員のろのろと立ち上がって、ぞろぞろと玄関へと移動を開始した。
「あ、駅までの道分かりますか?送りましょうか?」
「名前!お前への説教はまだ終わってねえ。」
「えー・・・?」
みんなの後をついていこうとする私の首根っこを掴んで、土方さんが引き戻した。
「土方さんは帰んねえんだな・・・。」
「後始末すんだろ。じゃなきゃ、男じゃねえぜ。」
「原田!平助!黙って帰れ!」
肩を竦めて、名前を呼ばれた二人が素早く玄関を出て行った。
「すまぬ・・・、俺がみんなを止められていれば・・・。申し訳なかった。」
「ごめんなさい、私も力になれなくて・・・。あの、誤解ですからね、本当に!」
最後、二人が謝ってから扉の向こうへと消えた。
残されたのは、首根っこを掴んだままの土方さんと、掴まれたままの私・・・。
急に戻ってきた静寂に我に返ると、私は頭を後ろへ反らして土方さんを見上げた。
「ビールとおつまみ、せっかく買ってきたんで、飲みます?」
「・・・・・・名前、お前は・・・・・・。」
呆れ顔に睨み下ろされて、しょんぼりと肩を落としたところで、土方さんの手が首根っこからやっと放れた。
ビールを冷蔵庫にしまうと、目に入ってきたのは小さなホールケーキ。
テーブルの上のご飯は綺麗に無くなっていたけれど、それは手付かずのまま残っていた。
そう言えば、結局自分は何も食べていなかったんだ、と思い出したところで、おなかの虫がぐぅぅと鳴いてしまった。
「あの、じゃあケーキ食べます?」
「・・・・・・。」
テーブルの上の残骸を片付けて、勝手にケーキを出す私に呆れているのか、土方さんが小さく息を吐いてから、こちらを見つめた。
「お前、飯食ってないのか?」
「・・・まだ食べてないから、食べないなら全部食べちゃいますよ。あ、おつまみにコロッケも買ったんだ!食べて良いですか!?」
「ああ。」
不機嫌そうに了承してくれる土方さんに笑顔で返すと、コロッケをほおばった。
「あ、お説教?どうぞ、続けてください。」
コロッケをお箸で挟んだまま言う私の顔に、土方さんが手を伸ばして・・・鼻を指先で弾いた。
「鼻、赤くなってんぞ。」
「外、寒かったんですよ。」
「悪かったな・・・。あいつらが飯全部食っちまったんだろ?」
「美味しいって言ってくれたんで、満足ですよ。」
「なんで、あんな時間まで食ってなかったんだ?」
「えー、何となく。」
「何となく・・・ねぇ。」
頬杖をついて、じっと見つめてくる土方さん。
お説教が始まらないことに首を傾げると、苦笑された。


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