あ〜あ・・・。 自分のテーブルを見て、呆れて溜息が漏れた。 クリスマス! 世間はクリスマスだよ!! 一人でテーブルに向かって溜息って・・・、寂しい女だな、私。 それでも・・・・・・。 もしかしたら、夜遅くになったら、また終電逃したら・・・なんて考えて・・・。 テーブルの上には、ささやかだけどチキンを用意しちゃったり、冷蔵庫の中には、一人のクリスマスだからって、ケーキくらい食べたいよね〜とか言いながら、二人でも楽しめそうな小さなホールケーキが入っていたり・・・。 いつ渡しても別にかまわないよね!と誤魔化しながら買った、替えのパンツと、男物のパジャマ。 だって、ねぇ、いつもパンツ一丁で寝かせて・・・、寒いよね。 私だけパジャマ着てるなんて、ずるいよね。 って・・・、全部言い訳だ。 まさか、当日に来るわけ無いんだけどさ・・・。 この前の可愛い部下だって、本当は彼女で、宿にしている家の女に彼女が居るって言ったら、もう来ちゃダメって言われるから黙ってたとかかもしれないし・・・ねぇ。 居なくたって、あんなイケメンさんだから、引く手数多だろうし。 同僚と飲み会とか、忘年会とか、このシーズンだよね。 ・・・来ないよぉ〜。 と、思っても、ご飯に手をつけられずに、もう数時間・・・。 イブも終わって、25日になったんだから、諦めよう、食べよう! でも、終電が終わったのはさっきだし・・・。 ・・・・・・自分がこんなに女々しいと思わなかったんだけど・・・。 恋・・・? 違うと思ってたけど、もしかして、本当に恋しちゃってた? うわっ!! 悲しい! 恋だと自覚したのが、一人で過ごすクリスマスとか、めっちゃ悲しい! 失恋確実じゃない!! ぐるぐる巡る思考を、頭を振って追い出してから、意を決して箸を持ち上げた私の耳に、インターホンの音が鳴り響いた。 まさか!!? そんな思いで、玄関まで駆けてドアを開けた私の目に、見知らぬ集団が飛び込んできた。 「・・・・・・どちら様ですか?」 「へ〜、この子が!」 「ずっと隠してるから、どんなかと思ったら!」 「中身が良いんじゃねえの?」 「・・・本当にただの宿なんじゃないの?」 いち、に、さん、し・・・・・・えっと、男が六人、女が一人? 「あれ、土方さん・・・?」 大柄な二人の後ろで、男性に肩を支えられた土方さんが見えた。 その斜め後ろに見えるのは、見覚えがあるような気がする顔・・・と言うことは、前に見たタクシーに乗ってた部下? 「とりあえず、入れてくれ!」 「新八・・・、失礼だと思うが・・・。」 「悪いんだけどさ〜、土方さん酔いつぶれちゃってさ〜。寝かしたいから入れてくれねぇか?」 目の前に立ちふさがる男性二人の勢いに驚いたまま、私は頷いて全員を中へと通した。 「へぇ〜、狭いけど、綺麗に片付いてんじゃん。」 「これが、・・・ねぇ。」 「すまぬ・・・、邪魔をする。」 「あ、あの、本当に良いんですか?断ったほうが・・・?」 最後に入ってきた女性の助言に、首を傾げてから私は笑った。 「良いですよ〜。土方さんのお友達ですよね。一人で寂しくクリスマスしてたんで、ちょうどいいくらいです。あなたも入ってください〜。」 遠慮しているのか、玄関から上がろうとしない女性の背中を押して家の奥へと進むと、狭いリビングにぎゅうぎゅうに、思い思いに座り込んでいた。 「土方さん、どうすっか?」 「廊下で良いんじゃないですか〜?ここ狭いから、こんな所で寝られたら迷惑。」 「あ、じゃあ、こっちにどうぞ。」 支えている人を案内して寝室のベッドに寝かせて、いつものように全て脱がそうとした時に、私の手は止まった。 流石に、みんなが居る時にそれはどうなんだろう・・・? そう思って、コートとジャケットとネクタイだけ脱がしてから掛け布団を掛けると、運んでくれた人に目配せをして寝室を後にした。 リビングに戻ると、土方さんのカバンから零れ落ちそうになっているプレゼントらしき箱を持ち上げて、喜色満面の人。 「おいおい、土方さんてば、こんなプレゼントを用意してるぜ!!」 「マジかよ!中見てみようぜ!」 「なあ、これ美味そうなんだけどよ、食っても良いか?」 「へぇ〜、一人でご飯なのに、豪華なんだ。これって、クリスマスだから、それとも、もしかして待ってたとか・・・?憐れだねぇ。」 「了承も得ずに食べるとは・・・。失礼ではないのか?」 「なあなあ、このネックレス!千鶴ちゃんにじゃねえのか?」 「千鶴、ちょっとつけてみろよ!」 「ええ!?永倉さん、平助君、ちょっと、やめた方が!それに、違うと思うんですけど・・・!」 「おい、このチキン冷めても美味えぞ!」 「一君も食べなよ。大好きな豆腐が入ってるサラダだよ。」 「総司も、勝手に食べるなど・・・。」 何か、さっきまでの静かだった家の中が嘘みたい・・・。 各々が好き勝手に寛いで・・・。 もしかして、私の家って、寛ぎやすいのかな・・・? 自分じゃ分からなかったけど・・・。 「あの、ビール、少しならありますけど・・・。」 「マジかよ!早く言えって!」 「飲む飲む!!」 「おい、これも美味えぞ!」 「ちょ、何三人だけで食ってんだよ、俺にもくれよ!」 「ほら、似合ってるじゃねえか!良かったな、千鶴ちゃん!」 「いえ、だから、あの、聞いてくださいよぉ!」 深夜なのにこの騒がしさ、大丈夫かな・・・? 少し心配しながらも、冷蔵庫からビールを出してみんなに配ると、みんなの目が一気にぎらついた。 「こんなんじゃ足りないね。」 「もっと無いの?」 「つまみも足りねえんじゃねえか?」 「誰か買いに行ってよ。」 獲物を狙う獣のようにぐるぐると喉を鳴らす男性たちの様子を眺めて、私は苦笑した。 「買ってきます。待っててくださいね〜。」 「お!悪いね!」 「金なら後でちゃんと払うからな!」 一応の礼儀はわきまえている様な、そんなでも無いような言葉に送られて、私はコートとお財布を取りに、寝室へと入った。 「あ・・・、ご、ごめんなさいね〜。ちょっと、コートとカバンを・・・。お邪魔・・・しました・・・。」 必要な物を引っつかんで、慌てて寝室を飛び出して、玄関すらも飛び出して、一目散に駆け去った。 心臓が、ダッシュでドキドキする前から、飛び出しそうな程にバクバク言った・・・。
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