翌日、名前と平助は再び土方先生に職員室に呼び出された。
宿題はきちんとこなして、授業は何事もなく終わったはずなのに…、終了間際になって、静かな声で告げられたのだ。
あまりに静かすぎて、何だか嫌な予感がしている名前だった。
昨日はあんなに「大丈夫だ!」と連発していた平助も、どこか固い。
土方先生の机の前に行くと、プリントを目の前に掲げられた。
「これは何だ?」
「宿題…ですよね…?」
自分達の文字が連なっている、昨日渡されたプリントに間違いは無い。
「一生懸命考えたんだぜ!」
平助が唇を尖らせて抗議すると、土方先生は、声に出して読み上げ始めた。
「もう少し優しくしてもらえると嬉しい。いくら土方先生でも、俺の彼女の名前に手出ししたら許さないからな。無理強いとか、絶対するなよ!」
「読み上げるなよなぁ!」
元気良く叫ぶが、土方先生の眼光の鋭さに、思わず後退りする。
土方先生のプリントを持つ指が、白くなり、プルプル震えている。
「それから、お前もだ!」
土方先生が、名前に向かって言い放つ。
「何が、たまにとっても怖い時があります…だ!!名指ししてなくても、俺の事だって分かりやす過ぎるんだよ!」
ビクリと肩を竦めて、ギュッと目を瞑る。
平助と一緒に宿題をやったからには、バレるのは時間の問題だとは思ったけれど、やはり見た瞬間にバレたらしい。
だったら、こんな宿題出さなければ良いのに…。
そう思っても、逆らえないのが悲しい。
「ったく、どいつもこいつもふざけやがって…。」
土方先生が、ボヤきながら宿題プリントをぐしゃぐしゃと丸めると、ゴミ箱へと放り込んだ。
「あ!宿題を捨てるなんて、酷ぇ!」
「良いんだよ。こんなもん、宿題でもなんでねえ。」
はぁ?と、なおも言いつのろうとする平助の頭を抑えつけると、無理矢理に反対側を向かせて、ドアを指差した。
「さっさと教室に帰りやがれ!休み時間は終わりだぞ!」
名前と平助にそう告げると、自分も授業の準備をし出してしまう。
ともかく、授業に遅刻する訳にはいかないと思い、名前は平助の手を取って、職員室を後にするのだった。

やっぱり、何か可笑しいと思ったんだけど…。
結局、何が可笑しかったのか、有耶無耶のまま、この宿題のことは日常にうもれていくことになった。




[*prev] [next#]

-top-



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -