店から出て周りを見渡すと、少しだけ離れた場所で土方さんが煙草を吸っているのを発見した。
「あ!バッグとケータイ返してください!」
走り寄って手を出すと、ワザとらしく顔の前で煙を吐き出されて、ウッと息が詰まる。
「っげほ!ケホ・・・、か、返してください。」
尚も言い募ると、やっと手渡してもらえた。
「お前・・・。」
「はい?」
バッグとケータイを受け取りながら返事をすると、頭に手を置かれる。
「つまんねぇなら、帰れば良いだろうに、何であんなのに付き合ってやってるんだ?」
「・・・・・・え?」
ドキリと胸が跳ねる。
帰れば良いなど・・・、出来るわけが無いじゃないか。
女の世界は、そんなに甘くは無い・・・。
それを分かっていて、外に連れ出してくれたのだろうか?
そんな事を考えて土方さんを見上げると、また煙を吹きかけられてしまった・・・。
「うげっ、げほっ・・・。」
煙に顔を顰めて睨むと、にやり・・・と妖艶に微笑まれてしまって、またドキリと胸が高鳴った。
「帰るぞ。」
「帰るぞって?」
煙草を落として足でもみ消すと、携帯灰皿に捨てる。
一応、そういうマナーは持っているんだと感心していると、先を歩き始めてしまう。
「え?あの!」
「家はどこだ?送る。」
「え?いや、いいですよ。」
「俺は車だ。送るくらい構わねぇよ。」
「いやいや、そうじゃなくて・・・。」
車で男の人と二人きりなど・・・、あんまり経験が無いから緊張してしまうという意味なんだけれど・・・。
「・・・ああ、安心しろ。お前を襲うほど飢えてねぇよ。」
「・・・・・・それは、安心ですね。」
ムスッと答えると、土方さんが振り向いて、再びニヤリと笑った。
駐車場に辿り着くと、土方さんが車の鍵を開けて先に乗り込む。
助手席の扉の前で少しだけ緊張して立ち止まっていると、いきなり後ろからぐいぐいと押されて、後部座席の扉まで移動させられてしまった。
「うわっ!な、何?」
後ろを振り向くとそこには、目を細めて楽しそうに覆いかぶさってくる総司さんが・・・。
「総司さん!?」
「はいはい、早く乗って。」
後部座席を開けて、押し込まれてしまう上に、総司さんが隣に乗り込んでくる。
「総司・・・、お前は前で良いだろう。」
運転席で総司さんが来るのが分かっていたのだろう、土方さんが驚いた様子もなく後ろを振り返ると、総司さんがふんっ、と鼻で笑い飛ばした。
「土方さんの隣なんて、ごめんだね。」
「なら、名前、お前が前に来い。」
「え?」
「良いじゃない。二人で仲良く後ろに居るから、気にしないでよ。」
総司さんの言葉に大きく溜息を吐いて、土方さんがエンジンをかけた。
「で?家はどこなんだ?」
「あ、えっと・・・。」
家の場所を説明すると、ナビに入力していく。
「なんだ、隣街じゃない。」
総司さんが、自分の膝に肘をついて、ずっと頬杖で覗き込んでくるのに戸惑いながら、なるべく座席の端に逃げる。
土方さんが車を出すと、総司さんがそっと近づいてくる。
「あの・・・、総司さん?」
「ん?何?」
「狭い・・・んですけど・・・。」
「そうだね。軽って、狭いよね。」
「じゃなくて・・・。」
どう見ても、総司さんの側の座席に空きがあるのだけれえど・・・。
指し示して見せるが、そっちをチラリと見て、にこりと笑顔を向けてくる。
「僕って足が長いから、これくらいじゃないと収まらないんだよね。」
寄りかかって、耳元に唇を寄せて答えてくれる総司さんに、全身が緊張で硬くなってしまう。
「総司、普通に座ってろ。」
土方さんがバックミラー越しに睨んでくるが、総司さんはどこ吹く風で全く取り合わない。
そして、総司さんの手が太腿に当てられる・・・。
「総司さん!?」
慌てて手を退かすと、その手を握られてしまう。
そして、その手にチュッとキスをされる・・・。
「何してるんですか!?」
「ん?キスだけど?」
「そうじゃなくて!」
手を振り解いて総司さんを押しやるけれど、全く動じずに再び太腿に触れてくる。
「ちょっと!土方さん、助けてください!」
「・・・だから、前に座れって言ったんだよ。」
呆れたように言う土方さんの言葉に、ショックを受ける・・・。
それだけ?助けてくれるとか、無いのだろうか?
しかも、そこまで分かってたなら、詳しく言ってくれれば良かったのに!!
道路を走り抜ける車の中で、総司さんからの攻撃をかわしながら二人を睨み付けると、総司さんが本気で名前の両手を片手で拘束して、太腿に指を這わして、ショーパンの中へと指を侵入させてくる。
「やっ!やめてってば!やんっ!」
つん・・・と、ギュッと閉じる太腿の間にあるショーツを突かれて、思わず変な声が出てしまって、顔中が真っ赤に染まる。
「・・・?総司!?」
土方さんが驚いたような声を上げてバックミラーで後ろを確認してくる。
「ふふっ、可愛い声。土方さんにも聞かれちゃったね。」
ゆるゆると与えられる総司さんの指の動きに抗う術がなく、泣きそうなほどに恥ずかしくて、土方さんに視線で助けてと訴える。
少しでも口を開いたら、また変な声が出てしまいそうで、それも恥ずかしくて耐えられない・・・!!
「ビクビクしちゃって、感じちゃってるんだね。」
総司さんが耳元で囁いてくる。それもきっと、土方さんには聞こえている・・・。
真っ赤な顔を振って、拘束されている手を外そうともがいていると、車が止められて土方さんが降りてくる。
扉を開けて、総司さんの手を解いて外に引っ張り出されると、安心して思わずしゃがみ込んでしまった。
「ったく、悪戯もほどほどにしやがれ。」
総司さんに向かって吐き捨てる土方さんの声に、怒気が含まれている。
「悪戯じゃないんだけど。」
総司さんの声も不機嫌さが表れていて、二人の間に微妙な空気が漂い始める。
「悪戯じゃないなら尚悪い。こういう女には、きちんと順序を守ってやれ。」
土方さんが車の中を覗き込んで、総司さんに忠告をすると、扉を閉めた。
そして、しゃがみ込んでいる名前の腕を持ち上げて立たせると、助手席まで引っ張っていく。
「総司が悪かったな。・・・まぁ、気に入らねぇ女に手を出すような奴じゃねぇから、あれも一種の愛情表現だと思って、許してやってくれ。」
「・・・・・・許せって・・・。」
「許せないなら、今後一切関わらないようにすれば良い。」
車の中で、仏頂面で外を睨んでいる総司さんを盗み見て、土方さんに視線を向ける。
「・・・・・・愛情表現。」
呟くと、頭に手を置いて少しだけ揺らされる。
「ま、俺も引く気は無いがな。」
ニヤリ・・・と笑みを残して、運転席へと戻っていく土方さんを、驚きで見開いた瞳で見つめると、車に乗り込みながら「さっさと乗れ。」と促される。
慌てて乗り込んで、家に辿り着くと、車は玄関前ですぐに去っていく。
その速さに、からかわれていたのだと思って、マンションのエレベーターでケータイを手に取ると、メールが二件入っていた。
しかも、知らないアドレスから・・・。
高鳴る胸に手を当てながら、部屋に戻ってメールを開くと・・・、総司さんと土方さんからだった。
今度は、もっときちんと時間をとって・・・という内容のメールに、収まっていた頬の熱が、また一気に高まってしまった。




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