ぱしり席・・・。
明日香ちゃんの言葉が頭を回っている。
先ほどから、土方さんと総司さんの喧々諤々やりあっている言葉が、耳をすり抜けていく。
店員さんがお酒を運んで来ては受け取り、空のグラスを渡し、料理を運んで来ては奥へと渡し、空のお皿を店員へと返す。
あぁ・・・、やっぱり、合コンで彼氏をゲットしようとか考えるから駄目なんだな・・・。
素直に、学校のゼミやサークルで探したり、友人の紹介で探したり・・・。
駄目だ、ゼミは女しか居ないし、サークルやってないし、今回の合コンも、いわば友人の紹介だ・・・。
就職先で探して・・・・・・。
就職決まってないのに!!
「あぁ・・・、私って、駄目だなぁ・・・。」
机に額をゴンとぶつけて項垂れる名前に、土方さんと総司さんが気付いて視線を向けてくる。
「なんだ、急に。」
「土方先生が苛めるからでしょう。」
「俺は何もしてねぇよ。それから、ここで先生はやめろ!」
「ふぅん、何もしてないから、落ち込んじゃったのかな・・・?なら、言ってくれれば色々してあげるのに。」
総司さんが不敵に呟くと、長い足を伸ばして、名前の足の間に忍ばせてくる。
「!!ちょっ!!」
勢い良く身を引いたけれど、掘り炬燵の中、限界まで身を引いても総司さんのつま先が膝を擽る。
「辞めてください!」
顔が真っ赤になっているのを自覚しながら、それでも毅然と言い放ち、掘り炬燵から足を上げて逃れると、土方さんが机の下に手を突っ込んで、何かを掴み取った。
「高校生の分際で、何してやがる。」
「土方さんに掴まれても、嬉しくないんだけど・・・。名前ちゃんが掴んでくれないと。」
「ガキの癖に色気づいてんじゃねぇよ。」
「別に、長い足を伸ばしただけなんだけどね。」
「ほう・・・、じゃ、俺もお前のほうにこの長い足を伸ばしても良いか?」
「お断りだね。」
二人の視線に火花が飛び散る。
それを見ながら、はぁ・・・と肩を落とした。
結局、二人のじゃれ合いを見せられるだけで、自分はただのネタにされているだけだと言う事だ。
畳の上に座りなおして、バッグの中からケータイを取り出す。
メールが入っているのに気付いて中を見ると、明日香ちゃんからだった。
『二人を独り占めって、サイテー』
・・・・・・。独り占めしてませんけど・・・?なんなら、席変わりますけど・・・。
返事をすると、即座に返ってくる。
『同じだと思うけど。ま、せいぜい頑張ってね、ぱしりちゃん!』
明日香ちゃんの感情表現は真っ直ぐすぎて、時々傷つく・・・。
チラリと盗み見ると、全くこちらに興味が無いように新八っつぁんと喋っている。
これで、あのメールを素早く返信してくる暇がどこにあったんだ?と疑問が湧いてくる。
溜息を吐いて、もう一つ入っているメールを見ると、前回の合コンで知り合った男からだった。
『今度デートしようぜ!○月×日の夜7時から、二人で会ってよ!』
再び、溜息が洩れる。
奈々と仲良くなっていたはずだけれど・・・、奈々から話を聞いているとは思わないのだろうか・・・?
会って直ぐにホテルに連れて行かれて、ヤラレテぽい!だった!!と・・・。
しかも、大きなこと言う割には早漏で、ナニも小さいと・・・。
奈々は、あんな感じにぶりぶり・・・じゃなくて、ぷりぷりしているけれど、実は紗枝よりも冷静で情に薄いんだからね!
断りの返事を送ろうとした所で、ケータイが手から消えていく。
「あ!」
取り返そうと手を伸ばしたのに、土方さんに頭を押し退けられて、遠ざけられてしまう。
「へぇ・・・、お前、行くのか?」
「行きませんよ!その人、あんまり良い人じゃないし、一回しか会ったこと無いのに、デートなんか出来ません!」
「・・・・・・へぇ、僕にも見せてよ。」
総司さんが目元を細めて手を差し出すと、先ほどまで仲の悪かった様子が嘘みたいに、すんなりと手渡した。
「何してるんですか!返してください!!」
「・・・・・・へぇ・・・、こいつ、どんな奴?」
総司さんの目が、捕食者の危険な匂いを嗅ぐわせる。
「し、知りません・・・。」
「知らないのに、メールなんかしてるの?」
「いえ、これが始めて来たメールです。」
「ほぅ・・・、随分と、頭の悪い野郎だな。」
土方さんも、目元を細めてにやり・・・と笑う。
二人の雰囲気が、一気に狩りに出かける獣へと変わる。
「か、返してください!」
「んー?ちょっと待ってね。」
総司さんが、ケータイを勝手に操作している。
「何してるんですか!!」
立ち上がって総司さんに駆け寄ると、その手からケータイを奪い返そうと手を伸ばす。
が、身体ごとぎゅっと拘束されて、ケータイを土方さんへと投げられてしまう。
「あ!返して!!」
土方さんの方へ取って返そうとするのに、総司さんが胸の中に閉じ込めて、更にはショーパンから伸びている太腿を撫で擦る。
「!!ちょ、総司さん!!」
「ん?君から飛び込んできたんでしょう?」
「違います!離して!」
バタバタと足を動かして抵抗すると、総司さんの手を土方さんが掴んで持ち上げる。
「総司っ!悪戯はそれ位にしておけ。」
「え〜、土方さんだって、触りたくて仕方ないくせに?」
「何言ってやがる。触るとしても、俺だったら二人きりの時に、思い切り乱れるくらいに触る方が好みだ。」
「うわぁ、相変わらず、卑猥だね。」
「猥雑なお前よりはマシだ。」
総司さんの身体から抜け出す名前の手を掴んで、土方さんが座敷から出て行こうとする。
「え?土方さん?」
「来い。」
「え?でも・・・あ!!」
先に外へと抜け出す土方さんの手には、自分のバッグとケータイが握られている。
「あ!返してください!!」
慌ててミュールを取り出すと、履いて後を追いかける。
後ろでにんまりと笑っている朱美の顔が、何故か背中ごしなのに見えた気がした・・・。




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