そんなことがあったことも忘れ去っていた一週間後、朱美にケータイを見せびらかされながら話を聞くランチ中、思わず口からチャーハンが飛び出した・・・。
「汚っ!きったない!」
「あ、ああ、ごめん!」
テーブルからご飯粒を集めながらケータイを覗き込むと、そこには確かに書かれている。
『合コン!?OKOK!やろうぜ!何人くらい集められそう?』
「何これ・・・、そんなに仲良くなったの?」
「ん?お詫びに、女を紹介します〜って言ったの。」
「紹介って・・・、彼女とか奥さんとか居ないの?」
「居ないって。そんなのチェック済みだよ!」
朱美が、当然でしょう!と鼻を膨らませて笑いかけてくる。
「で、これはどっちとメールしてるの?」
「ああ、最初に教えてくれたほう。永倉新八って言うんだって。新八っつぁん。」
「新八っつぁん。」
あまり思い出せないけれど・・・、そんな呼び名が似合うような感じだったかもしれない。
「え、でも、狙いはもう一人でしょう?」
「原田左之助さん。左之さんは、あんまりメール返してくれないし、話してて面白いのは新八っつぁんかな。」
「・・・そうなんだ。頑張ってね。」
「何言ってんの、失礼したのはあんたなんだから、一緒に行くに決まってんじゃん。」
「・・・はい!?」
「あんたも行くの。他、声かけたら全部で6人くらいになっちゃったけど、大丈夫かな〜・・・。」
「・・・もう声かけたの!?」
「うん。こう言うのも、気が変わる前に決めないとね。」
カレーを口に運びながらメールを打ち、自分に話しかけてくる朱美に、ウンザリする・・・。
事あるごとに自分を出汁に使って合コンをセッティングしては、男をかっ攫って行く朱美。
そして、自分はいつも、結局何も話せなくて、何も出来なくて、チャンスを逃すだけなのだ。
男が苦手というわけでは無いのだけれど、朱美とは趣味が合わないわけで、朱美がセッティングする男たちは全面的に苦手だった。
今回の二人の印象は、普通に社会人だったと思うけれど・・・。
すると、着うたが流れて朱美がメールチェックし始める。
「あ、6人揃えてみるって!じゃ、明後日の夜七時に、店は・・・個室が良いなぁ〜、左之さんを誰かに狙われたら嫌だし。」
「・・・ん?新八っつぁんじゃなかったの?」
「メールが楽しいのはね。でも、やっぱり生で見るなら左之さんだな。」
「そ・・・そう。」
「ちなみにね〜、明日香と、恵理奈と紗枝と奈々が来るからね。」
「あ、明日香ちゃんまた来るんだ。」
明日香ちゃんは、朱美の妹で、朱美をケバいと称するなら、明日香ちゃんはギャルだ。
ギャルが落ち着くとケバくなるんだな・・・と、二人を見て思ったのを思い出す。
「まぁ、いつものメンバーかな。」
「そうだね。」
恵理奈と紗枝と奈々は、同じ大学で仲が良くなった三人で、みんなタイプが違うのに、何故だか五人で集まると賑やかで楽しくなるのだ。
「じゃ、名前の服を買いに行こうか!」
「・・・やだ。朱美とは行かない。」
「何でよ!」
「奈々と行く。」
「奈々!?あんなぶりぶりした服着てきたら、脱がすよ!」
「何でよ!ぶりぶりは流石に買わないよ!」
「じゃ、良いけど・・・。でも、私も買いたいから一緒に行く。」
「あ、それならいいよ。奈々にメールしよっと。」
「何でそんなに嫌がるかな!」
「朱美の服、好きだけど私には似合わないんだもん。」
「ま、タイプが違うからね。」
ケータイでお店検索をしていた朱美が、ここなんてどう?と示してきたのは、居酒屋。
けれど、個室があり、掘り炬燵で食事も美味しいと評判の店だった。
「掘り炬燵ってことは、靴を脱ぐわけでしょう?」
「足が臭いかどうかも、チェック対象。」
「こっちが臭かったら・・・・・・。」
「・・・そこはさ、前もって臭い消ししておきなよ。」
「・・・はぁい。」
脱ぎやすいミュールにするかな・・・と思いながらショッピングに思いをはせていると、朱美がケータイを閉じてカレーをかき込み始める。
「次の講義始まっちゃうよ。」
「あ、本当だ!これ逃すと、後が痛いからね。」
「四年にもなって、きちんと講義受けてるなんて・・・。」
「いや、それ当たり前だから。」
「就職も決まってないのに・・・。」
「それ、言わないで・・・。」
「だから、永久就職を目指す!」
「・・・・・・ガンバレ。」
チャーハンを食べ終えると、水を急いで飲み込んで、バッグを持って学食を後にする。




そして、合コン当日・・・。
新しい服に身を包んで居酒屋へと乗り込む女6人。
「やっぱり、花柄・・・。」
「・・・すんまへんなぁ。」
「ま、あんたにしては攻めた方だね。短いスカート。」
「・・・ごめん、これ、ショーパン。」
「・・・・・・脱がす!!!」
「何でよ!」
「こらこら、いい加減にして。お店に迷惑でしょう!」
「紗枝〜、だって朱美が!」
「おねぇ、私も名前ちゃんの化粧を変えたい。」
「とりあえずぅ、ツケマつけるぅ〜?」
「あ、私もやって欲しい。左之さんて人、芸能人並なんでしょう?」
「ん・・・、恵理奈ちゃんもういっぱいついてる・・・。」
ケバい姉御肌の朱美、その妹、高校生ギャルの明日香、こざっぱりとしたスポーティー紗枝、ぷりぷりの奈々、芸能人おっかけ命の恵理奈、そして自分の6人。
「あれ、まだ来てないんだ。」
「ん〜、先に来ていない時点で、減点だな。」
「左之さんがどこに座るか、これじゃ分からないじゃん!」
「後で席替えすれば?」
「絶対に、してやるぅ!」
「私、ピーチサワー。」
「未成年、飲んじゃ駄目!」
「え〜、いいじゃん。」
「駄目です!」




さて。
あなたが座った席の前には誰が?




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