どれくらいそうしていたのか・・・。
薄暗い部屋の中、壁に背を預けて蹲っていたれいが、ピクリと身じろぐ。
廊下から慌しい足音がして、襖が開けられる。
明るい廊下の光に目を細めて見上げると、そこには愛しい人の影がくっきりと映し出されている。
後ろ手に襖を閉めて、近寄ってくる斎藤さんの方を向く。
斎藤さんが駆け寄って、膝まづいてれいの頬に手を当てる。
「まさか・・・とは思ったが・・・。」
れいは、斎藤さんの頬を触り、肩や腕、胸を触って感触を確かめる。
その手の動きを制して、斎藤さん胸に抱きしめてくれる。
「お前・・・れいか・・・?」
「斎藤さん・・・、ご無事ですね?」
「ああ。何とも無い。」
急いで来てくれたのか、斎藤さんの肌はしっとりと汗で濡れて蒸気を放つほど熱くなっている。
「良かった・・・。良かったぁ・・・・・・。」
斎藤さんの温もりをしっかりと感じながら、れいは胸に顔を埋めた。
しかし、斎藤さんがれいを引き剥がし、顔を真正面から睨み据える。
「あ、あの・・・?」
その眼光の鋭さから、最近の斎藤さんが機嫌が悪かったことを思い出す。
「何で、怒って・・・?」
「怒ってない。」
「じゃ、何で睨んで・・・?」
はぁ・・・と、視線を外してため息をつくと、れいの頬を掴み、口付けを落とす。
「ん・・・」
それを受け入れながら、普段とは違う荒々しさを感じて戸惑う。
斎藤さんの舌がれいの唇を割って中に侵入してくる。歯列をなぞり、舌を絡めて吸い上げる。斎藤さんが与える感覚に、次第に翻弄されて息が上がっていく。
「んっ・・・ふぅ、ぁ・・・」
斎藤さんの手が、首筋を辿り鎖骨に指を這わす。その感触に肩が震える。
口内を堪能した斎藤さんの舌が、そのまま顎を辿り仰け反らされて露になった喉元に這わされ、時折優しく歯を立てられる。
「ぁぁ・・・」
か細い喘ぎが、時折れいの唇から毀れる。
「斎藤さん・・・っ?」
肩口を食まれ、斎藤さんの着物を握り締める。
このまま斎藤さんの与える疼きに支配されてしまうのも良いかも知れない・・・そんなことを思いながら、れいは斎藤さんの首を掻き抱いて、耳に口づけをして舌を挿し入れる。耳たぶを噛んで、その首筋に吸い付く。汗で湿った斎藤さんを感じながら、斎藤さんの反応を確かめながら、舌で愛撫をする。
斎藤さんが、れいを掴んで放すと、そのまま後ろに押し倒してくる。
上から圧し掛かる斎藤さんの表情を見て、全身が反応する。
艶を含んだ斎藤さんの瞳が、自分を翻弄する唇が、濡れて光る様子は美しさすら醸し出している。
「斎藤さん・・・。」
「お前は・・・っ。」
斎藤さんが、苦しそうに言葉を紡ぎだす。
「遊郭で身を売って、何をするつもりだ?」
「・・・あ、違っ」
斎藤さんが、れいの返事を聞かずに胸元を隠している着物を引き摺り下ろす。
「これは、違うんですっ」
「何が違う?」
「ふっ!ぁ!」
胸を鷲づかまれて、反対側に口をつけられる。舌で輪郭を舐り、硬くなって存在を主張し始めた頂を口に含む。
背筋に這うざわ・・・とした快感に、れいの腰が跳ねる。
「ぁ、そ、違うの!ホントに・・・!」
「山崎と、良い仲らしいと聞いた。」
「それは、お客さんんぅ、が、勝手、に・・・ぁんっ」
斎藤さんの手が、帯を解きにかかる。その間にも与えられる胸への愛撫で、れいは次第に余裕がなくなっていくのを感じていた。
「遊女に成りすます理由があるのか?」
「無い!無いっけど・・・、やむを得ぬ理由が・・・、あ、っん」
帯を解かれ、裸体を目の前に曝す。斎藤さんが少し離れてじっくりと見てくる。
その事にすら快感を覚えて下腹部が疼いてしまう・・・。
恥ずかしさから、れいは身を捩って視線から逃げようとするが、斎藤さんの手がそれを阻み、両手を頭の横で固定されて全身をくまなく見つめられてしまう。
「や・・・、恥ずかしいから・・・っ!こんな、おばちゃんの裸見たって、仕方ないよ・・・。」
「いや・・・、綺麗だ・・・。」
斎藤さんが、再びれいの唇に貪りつく。裸にされた肌に斎藤さんの着物が時折触れて、胸の頂が敏感に反応していく。
「ん、っふ・・・」
「はぁ・・・、何故、他の男に触らせる?」
「触らせていませんっ!」
「先ほどは・・・。」
「私から行った事ないです!自分から触るのは、斎藤さんだけです・・・。」
れいは頭を持ち上げて、斎藤さんに口付けをする。斎藤さんがれいの肩を床に押し付けて放す。
「じゃあ、何故こんな所で、こんな事を?」
「これは、お世話になっている太夫からの頼みで・・・。」
「お世話になっていれば、遊女の真似事もするのか?」
「いえ、遊女として来た訳じゃなかったんですけど・・・。」
「しかし、これが事実だ。こうして、男に組み敷かれて居るのが現実だ。」
「それは、斎藤さんだったから・・・。」
「俺とは知らずに、部屋に来たのだろう?」
「・・・・・・。」
確かにそうだ。斎藤さんだとは思わず、覚悟を決めて部屋に入った。
それまでは、誰であろうと抱かれても仕方が無い、と思っていた。
「何が、いけないんですか?」
「な・・・にが・・・っとは?」
れいの言葉に、斎藤さんが目を見開く。
れいがしっかりと斎藤さんの瞳を見つめて言ってくるのを呆然と聞く。
「仕事のためなら、遊女を呼んで、気に入れば抱く。そうでしょう?なら、私が仕事のためなら遊女に扮して、気に入られたなら抱かれる。それの何がいけないんです?やっていることは同じだと思います。」
「同じじゃない。お前は女だ。」
「女です。女が女の武器で戦ってはいけませんか?斎藤さんが刀で戦うより、危険が無いと思います。」
斎藤さんを睨みつけながら、れいが毅然と言い放つ。
「斎藤さんのためなら、身体くらいなんですか・・・。」
「・・・・・・俺のため・・・?」
虚をつかれて、瞳を瞬く斎藤さんの手を肩から退けて、れいは身を起こした。
そうして、背中を向けて身体を隠すと、ポツリと呟く。
「斎藤さんだって、『りん』を呼んだじゃないですか・・・。任務中なら、居なくなってくれたほうが楽なのに、傍に置いたじゃない・・・。」
「それは・・・、それとこれとは話がっ!」
「もう、帰ってください。私の任務も終わりです。斎藤さんが無事な姿を見届けるために残ってただけですから。」
「れい・・・」
「それとも、『りん』がお相手しましょうか?はじめさんのことですから、きっとお金払って入ってきてくれたんでしょう?時間一杯、奉仕させていただきますよ。」
斎藤さんを振り仰いで、挑発的な笑顔を向ける。斎藤さんはれいに向けて伸ばした手を引っ込めて、頭を抑える。
「どうしたんですか?はじめさん。」
斎藤さんの着物の合わせ目の隙間から手を侵入させて、しっかり引き締まった胸板をそっと撫で上げる。
そして、斎藤さんの身体にしなだれ掛かり、背中で結ばれている帯を解く。






prev next

-top-


「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -