れいは、斎藤さんと一緒にみんなが居る部屋へと戻った。
すると、そこには大いに盛り上がる新選組幹部連と、それに振り回されて後始末に追われている千鶴ちゃんが居た。
一番先に気づいた千鶴ちゃんが、泣きそうな顔で二人を見る。
「あ、あの・・・。」
原田さんが、腹踊りをしながら一升瓶をがぶ飲みしている。
そして、その横で永倉さんと藤堂さんが大爆笑をしている。
土方さんと沖田さんは二人で睨み合いながら杯を煽っている。が、明らかに土方さんの顔色が悪くなっている。
「副長は、どうした?」
「あの、沖田さんの飲み比べを受けちゃって・・・。いつもは、斎藤さんが止めてくれるのに、今日は居なかったので・・・。」
「そうか・・・。」
斎藤さんが、二人の間に割ってはいると、お酒を奪ってお水を持たせる。
「なにしやがる!おれぁまだ負けてねぇ!!」
「いえ、副長。勝ち負けではなく、そろそろ時間です。」
原田さんが腹踊りをやめて、千鶴ちゃんとれいの前に進み出てくる。
「お、れいちゃん戻ってきたのか。じゃ、続きやろうぜ!」
「いえ、もう今日は・・・。」
「私も、お酒は・・・。」
「いいじゃんかよ!せっかく戻ってきたんだからよぉ!」
永倉さんが、千鶴ちゃんとれいの肩を抱きしめる。
と、そこに斎藤さんの刀の鞘先が永倉さんの背中を思い切り突く。
「いってぇ!!!」
「ああ、すまない。」
「何だよ、斎藤!邪魔すんなよ!」
「野郎共!時間だ!引き上げるぞ!」
斎藤さんに掴みかかろうとしていた永倉さんが、土方さんの号令で肩を落とした。
「え〜、もうちょっと良いだろう〜?」
土方さんが、足元をふらつかせながら歩いてくる。千鶴ちゃんが心配そうに近寄り、肩を貸す。
が、それを無下に断って藤堂さんの頭に手を乗せて身体を支える。
「土方さん、せめて肩にしてくれよ!」
「おめぇの肩じゃ低すぎんだよ!」
「じゃ、俺の肩を貸してあげましょうか?」
余裕の表情で沖田さんが土方さんの肩を支えようと、脇に滑り込むと、それを避けてふらっと数歩たたらを踏む。
「おめぇの肩なんざ、借りねぇ!」
そのままよろめきながら更に数歩進んで、藤堂さんが原田さんにぶつかり、支えを失った土方さんが倒れこんでくる。
あ・・・と思う間もなく、永倉さんとれいを巻き込んで大きな雪崩となる。
永倉さんは横に弾かれて柱に頭を打ったらしい、大きな音が鳴り響く。
そして、れいは背中と頭に衝撃を感じつつ、身体の上に圧し掛かる重さで息苦しくなった。
「重い!」
目を開けると、土方さんがれいの胸に顔を埋めて倒れこんでいる。
「あんだぁ〜?なんか柔らけぇ・・・?」
片手で身体を支えて起き上がり、もう片方の手でれいの胸を鷲づかみ、更に数回揉み解される。
「・・・・・・」
顔がカッと厚くなる。そのまま手を振り上げて、土方さんの頬に勢い良く振り落とした。
「土方さんなんか、だいっ嫌い!!!」
バッチーン!!と大きな音がする中で、低くゴツっという音も同時にした。
土方さんは、そのまま倒れて気を失ってしまった・・・。
「うわぁ〜〜〜〜ん!!も、揉むなんて酷い!いくらなんでも酷いよぉ〜!!」
「れい、大丈夫か!?」
「大丈夫じゃない〜〜!!もうやだ〜!帰る〜!!」
「土方さん、大丈夫ですか!!?」
「おい、新八?生きてるか〜?」
「あ〜あ、土方さんてば、女の敵だね。」
「いいよなぁ〜、俺だって揉んでみてぇよ・・・って、睨むなって!何でもねぇし!」
いい大人たちが酔っ払ってはめを外すと、大惨事が起きる・・・と、千鶴ちゃんはこの時に勉強したらしい・・・。



結局、屯所には土方さんと永倉さんが目を覚ますまで帰れず、藤堂さんと千鶴ちゃんだけ先に帰って事の次第を近藤さんに報告したらしい。
れいは斎藤さんに宥められながら家へ帰り着いた。
しかし、自分が土方さんの頬を引っ叩いた時に、斎藤さんの鞘が土方さんの後頭部を強か打っていたことを見逃さなかった。
「斎藤さん、触られちゃいました・・・。」
「っく・・・、俺だってまだ触っていないのに・・・。」
「・・・・・・斎藤さん・・・。」
道中、そんなやり取りがありつつ、家に送り届けるとすぐに去る斎藤さんを見て苦笑をするのだった。
結局、独占欲は示されたけれど、確たる言葉も無く、態度も曖昧。
これって、どんな関係になったのかな?もしかして、何も変わってない・・・?
そんな関係でも、以前よりは進歩したのかな・・・と、嬉しくなってしまうれいだった。



翌年の二月
山南さんが羅刹へと変貌する。
苦しみを抱えている彼の心を、このときは誰もどうすることも出来なかった・・・。






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