竹 



ますぐなるもの地面に生え、
するどき青きもの地面に生え、
凍れる冬をつらぬきて、
そのみどり葉光る朝の空路に、
なみだたれ、
なみだをたれ、
いまはや懺悔をはれる肩の上より、
けぶれる竹の根はひろごり、
するどき青きもの地面に生え。


―萩原朔太郎『竹』より―










僕は何より剣に生きてきた。
近藤さんや土方さんの側で、あの人達の役に立ちたい。そして剣によって共に歩んで行きたいと……。


他のことはどうだっていい。
剣以外に執着も関心も持たない僕。飄々としていつもにこやかにしている僕を、解せぬと言う人もいる。
茶化して揶揄ばかりする僕に呆れる者もいる。


けれど
この竹のように心は何時だって真っ直ぐに剣に向いているんだ。
根は地中で幾重にも絡み強く広がるように、確固たる信念がそれを支えている。


なのに…、最近は彩花さんのことを考えてしまう。

最初に見かけた印象は珍妙な格好をした娘さんだった。名を尋ねたら躊躇いがちに教えてくれた。

何故こんなにも心を捕らえられる?
彼女の笑顔を思い出すとじんわりと温かなものに包まれる。

「彩花さん…、また逢えるかな?」

名を呟き、らしくないと自嘲しても心を持て余してしまう。



修羅の異名を持つ新撰組の一番隊組長



「優しい娘さんより僕にはこれがお似合いだ」


クスリと笑い、涼やかな風の抜ける
下草をも生えぬ竹林の中
青々とした一本の太い竹にそっと手をかけた。














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