【Stoic√】writer:唯さん

writer
 ト書き:唯さん
 セリフ:唯さん、しずさん



―――――――――




「や、めろ...!」

自分から抱きしめたにも関わらず、このままでは何もかも、耐えきれそうになくて。

僕は彩花さんを自分から引き剥がした。

「武市、さんの...ばか...!」

そんな僕に彼女は、きっ、と鋭い視線を向けて、部屋を飛び出して行った。



「...これでよかったんだ。これで...」

独りきりになった部屋で、立ち尽くしたまま僕は呟く。

そうだ...年端のいかぬ女子を、傷つけてはいけない...



だが、今の彩花さんの言葉は、表情は、僕が初めて見た彼女の"女"の部分だったように思う。

いつの間にか君は、少女から大人の女性へと成長していたのだろうか...



そう考えたところで、はたと気づく。

「...むしろこの態度こそが、彼女を傷つけたんじゃないのか...?」

いつまでも子供扱いをされているのではと、彼女は不安だったのかもしれない。

もちろんそんなわけはないけれど、今の僕の態度は彼女にとって、その不安を確信に変えてしまったんだろう。



部屋を出る直前の君の顔を思い出して、胸が締め付けられる。

気がつけば、僕は部屋を飛び出していた。



彩花さんが行きそうな場所を考え、寺田屋内を歩き回る。

だが、彼女の姿はない。

まさか外に...?

そう思った時、龍馬の部屋から話し声が聞こえた。






[彩花side]


飛び出したはいいものの、行くあてがあったわけではなくて。

俯いたまま廊下をふらふらと歩いていると、何かにぶつかった。

「うおっ!」

「あ...ご、ごめんなさい!」

顔を上げた先に居たのは龍馬さんだった。



「どうしたんじゃ彩花さん!その顔は!」

「...りょ、ま、さん...」

絞り出した声は情けなく震えてしまって。

「と、とりあえず部屋に入るとええよ...」

心配そうな顔をした龍馬さんが、自室へ入るよう促してくれた。



「何があったがじゃ...」

龍馬さんが優しい声で、表情で、話しかけてくれる。

こらえていた涙は、堰を切ったように溢れ出した。

そして、私は促されるまま先ほどのこと、今までの思いを、つっかえながらも素直に吐き出した。



恥じらいとかそういうものは、今はどうでもよくて。

ただただ、武市さんが好きで好きで、大好きで。

もうどうしようもないこの気持ちを、誰かに聞いてほしかったんだ。



「...」

私の一方的な話を、龍馬さんはただ黙って聞いてくれていた。

だけど私はその沈黙が意味するところを、理解していなかったのだ。



「彩花さん...」

苦しそうな龍馬さんの声に気がついた時には、もう遅くて。

「!」

あっという間に私の身体は、龍馬さんの腕の中に収まってしまった。

「龍馬、さん...?」

「...わしなら、そんなことはせん。」

「え?」

私を抱きしめたまま、変わらず苦しそうな声で話す龍馬さん。



なんで、そんなに苦しそうなの...?



「彩花さん、わしじゃだめなんか?」

「!」

「わしなら、彩花さんを泣かせるようなことなどせん!!」



次の瞬間、私の目に映ったのは。

苦しげな龍馬さんの顔と、射抜かれるような鋭い眼差し、そして、

―――見慣れぬ天井だった。




[武市side]


襖に手をかけた瞬間、龍馬の声が耳に飛び込んでくる。

「わしなら、彩花さんを泣かせるようなことなどせん!!」

続いて聞こえたのは、ドサッという物音―――








Now, choose?

『あなたが武市さんだったら・・・』
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