【共通√ 唯さんVer.】
writer
ト書き:唯さん
セリフ:唯さん、しずさん
―――――――――「君はっ...どうして...!僕がこんなに...耐えているのに!!」
何がきっかけだったのか、私にはわからなくて。
それでも、私の言葉に、あるいは行動に、その原因があるということだけは理解した。
「えっ、あの...たけ、ち、さん...?」
怒っているようにも、苦しんでいるようにも聴こえる武市さんの声。
そこには哀しみの色も見え隠れしている。
どうしていいかわからなくて、私はただ彼の名前を呼ぶことしかできなかった。
「...」
戸惑う私のもとへと、無言で近づいてくる武市さん。
次の瞬間―――
ぎゅっ、と、その腕で力強く抱きしめられる。
「君に触れまいと...いつも必死なんだ。」
押しつけられた広い胸から聴こえてくる鼓動は、いつも冷静な彼に似つかわしくない速さで。
「一度触れてしまえば、もう止まれなくなるのが、怖い...」
いつも自分だけどきどきしてるんだと思っていたのは、間違いだと気づいた。
そして彼が予想より遥かに、私を大切にしてくれているということもわかった。
「...」
そんな彼が愛しくてたまらなくて。
間近にあるその服を、きゅっと掴む。
「!」
「...よかった。」
「え?」
「私に魅力がないから、その...そういうこと、しないのかなって。でも私を思ってのことって、わかったから...よかった...」
私はいつも不安だったのだ。
大人の男の人である武市さんが、なぜ私みたいな小娘を好きでいてくれるのか。
好きならばなぜ、求めてくれないのか。
それはその愛情が、親が子を可愛がるようなものだからじゃないのか。
そうやって、ずっと悩んでた。
だけど、そうではなくて。
それは武市さんが、私を大事に大事に、惜しみない愛情で包んでくれているからだったんだ。
そのことが嬉しくて嬉しくて。
素直に胸の内を打ち明けた私に彼が見せた反応は、予想外のものだった。
「魅力がないわけがないだろう......君の姿に...何度、眠れぬ夜を...あ、」
「!」
思わず武市さんの顔を見上げる。
だって、今...なんて...?
「...」
「...」
気まずそうに、照れたように、少し頬を染めて視線を逸らす武市さん。
その顔になんだか、きゅん、って。
胸が甘く、締め付けられる。
「...あの、」
だけどなぜだかそれが、今の私にはもどかしくて。
彼の本心を知ってしまった今、もっともっとと、先を貪欲に求めてしまう。
「...なんだい?」
「...」
そして言葉にして伝えようとしてみるけど、やっぱり恥じらいというのはあるもので。
私は再び黙り込んでしまった。
「ん?」
でも、そんな私に優しくて甘い表情で、先を促す武市さん。
そのたった一文字で、彼は私の恥じらいを剥ぎ取って、本心を引き出させた。
「きょ、今日の夜も...違う意味で、眠れない夜にしてもらえませんか...?」
「っ!!」
ああ、私はなんて大胆なことを言っているんだろう。
だけどきっと、私から言わなければ、彼は頑なに理性という鎧を脱ぎ捨てることを拒むのだろう。
そういう人だから。
私を絶対に傷つけまいと、自分の欲望を押し殺すことも厭わない、優しい優しい人だから。
「...それ、は...」
私を抱きしめる武市さんの腕に力が入る。
さあ、その残酷なほどの優しさを捨てて。
―――共に欲望に溺れてしまいましょう?
だけどその後彼の口から紡がれたのは、期待を裏切る言葉だった
[武市side〕
「...だめだよ。君は何も分かってない...僕なら...我慢、できるから。」
そう、君はまだ、可憐な少女なのだから。
その純潔を、単なる僕の欲望で踏みにじることなど、あってはならない。
僕の言葉に、彩花さんがその大きな瞳をさらに見開いた。
次の瞬間―――
「!」
肩に手がかかったかと思えば、引き寄せられて。
...触れたのは、二つの唇。
「わかってないのは、武市さんです!我慢なんて...しないで...」
そう言って潤んだ瞳で僕を見上げる彼女は、残酷なまでに美しかった。
ああ、なぜ君は。
僕の欲望に塗れた醜い姿を、暴こうとするのか。
Now, choose?
『あなたの好きな武市さんは・・・』
● 勿論ストイックなところ! → ● 時々暴走しちゃうところ! →[ 2/19 ]