05 そして再来院
ワタクシ今日も寝坊しました。てへ☆
一限は出欠に厳しい必修の岩倉先生なのに…
いや、努力はしましたよ。走って走って走り抜いたけど、これに乗らなければ遅刻確定の電車を鼻先で閉められ、でもめげずに次の電車に乗って、死ぬ気で急いで来た!
メロスかナマエかって走りだ。
こんなに必死になったことは
やまだかつてないぐらいに…
って今ドキ誰も知らねーよ。
山田邦子の番組名なんて。
とにかく頑張ったが
ナマエ〜アウト〜
状態。
岩倉先生の授業は座席指定な上に出欠とり終わった時点で教室の内側から鍵を閉める徹底ぶり。
その上、授業三回欠席したら赤確実。
つまり留年。
そんな恐怖の必修授業が何故一限!
私は今、押しても引いても開かない教室の扉の前に立つ。
やっぱ開かない……。
蟄居命じられてるわけでもないのに頑なだな岩倉先生。
うん、女は諦めが肝心だ!
てなわけで、食堂でうどんすすり中なう。
一人侘しく七味唐辛子を入れ過ぎたうどんを咳き込みながら食しているとカナちゃんがやってきた。
『おぉ!カナちゃん、おは〜』
「ナマエ〜。うどん食べてる場合じゃないよ。一限どうしたの?」
『うん、人生自分の力じゃどうにもならないことがあるのだと悟ってるトコ』
「もー、それより腰あれから大丈夫なの?」
カナちゃんは今日も可愛いのー。なんか癒される。
けど私の留年崖っぷち状態をそれよりとは聞き捨てならない。
『んー、腰はまだ不安感あるけど、全速力で走るぐらいには復帰したよ。
今日から部活も出る予定だもん』
あれから腰を庇いながらの生活をしていたが、なんとか人様なみの暮らしまでたどり着いた。
病院もお世話にならずにすんでいる。
喉元すぎれば、なんとやらだね。
「そっか、良かった。早く片付けて二限行こ」
『ぶっ、ラジャー』
私のギャグをいつものようにサラリとかわされ、カナちゃんと共に教室へ移動する。
二限はエロ伊藤の英語の授業。
緩い授業の上に毎度下ネタ爆裂。
ホント好き者だな、この先生。何故か今日は脱線して芸者遊びについて語り出した。
ふー、今日もいい天気だ。今朝床に投げつけてクラッシュさせた目覚まし時計…明日からどうしようなんて考えていたら…
『…んっ?』
あれ?ちょっと腹が…
あれれ…!?
うっ!…
『…す、すみません!トイレ行ってきます』
乗って話していた伊藤先生は話を中断されて怪訝な顔したけど、すぐに手で行け行けと追い払うように合図した。
『ごめん。カナちゃん。ちょっと差し込みが…』
隣に座ってるカナちゃんに断って席をたった。
なんだ、この痛さは!
盲腸か?
いやいや、まさか。
さっき食べたうどん?
それとも大量の七味唐辛子が暴れてるのか?
今朝食べたロールパンとお好み焼きと支那竹の食べ合わせが悪かったのか?
いてじゃ〜〜。
トイレに行ったが上からも下からも何も出ない。
どっちからか出れば楽なのに(食事中の方ごめんなさい)
吐き気もあるような、ないような…
脇腹のような胃のあたりのような……。
なんだか、最近の私はどうして立て続けに…
キリキリ痛むよ〜
お母さーーん。助けてー。
って今頃母は韓ドラにかぶりついてるであろう。
トイレで改善しない痛みにのた打ち回っていると天使の声。
「ナマエ?いる」
『カナちゃ〜ん。ここにいます…』
「大丈夫?いつまでも戻らないし、なんか様子が変だったから私も抜けてきた」
『なんか、ググッと強烈に痛い!痛いよ〜〜』
トイレの扉越しに会話するのが妙に切ない。
「ナマエ、もしかして私と同じで急性腸炎じゃない?」
『ふぇ?』
思い出したカナちゃんが経験した急性腸炎体験談。
昨年カナちゃんは夜中に急に差し込みが猛烈に痛くなり救急車で運ばれたそうだ。近所の病院は一杯で、幕恋病院まで運ばれたらしい。どうにもこうにも、痛くて、なんとか病院についた。
やっと診察台に寝かされたとこに医者が来たと思ったら、心配して付き添う両親を診察室から追い出し扉を閉める。
親にも言えない重大な病?
一体何事?と緊張していたら、
「妊娠の可能性は?」
と真顔で聞かれたそうだ。
そりゃ、レントゲン撮るためとかだと思うけど、痛さのピークのカナちゃんは「はぁ?」身に覚えないのにこの情況で何言ってんだとテンパって
「そんな経験まだ、ありませんっ!」
と叫んだそうだ。
夜中に自分の未経験を絶叫暴露☆
そしてなんだかんだで検査入院で大量下剤を経て直腸検査。
うら若き、未経験乙女なのに、お尻の穴をブスッとね。
そして最悪なのが、担当したのが若い男の先生だったそうだ。実際のブスッ…は年配のオバサン看護師さんだったらしいけど。
そのカナちゃんの武勇伝を涙と笑いなくしては聞けなかった私。
よもや、自分にも同じ運命が下るとは……。
う、やばまたキリキリしてきた…。
こないだぎっくり腰の時にもらった痛み止め。
念のため持ち歩いてたけど、ええい。これでいいや。水なしだが飲んでまえ。
※薬の用法は正しくお使いください。
なんて台詞が頭をよぎるが、今の私はワラをも掴む溺れる者。
「ナマエ。病院行ったほうがいいよ。痛み治まらないんでしょ?救急車はイヤでしょ?」
『うん、周期的に激痛がくるから、ちょっと、痛み治まったら、その時に行く…』
そうして私は幕恋病院の門を再びくぐることになった。
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