02 魔女の一撃

「ナマエ〜遅いよ!」

『ごめん!ごめん!』

「あんたまた髪とかしてこなかったでしょう?寝坊したの?」

『うぃ?へへバレた?』

そういうカナちゃんは相変わらずのキューティクルヘアをしゃららんってな具合になびかせている。
うん、女子力が高い可愛子ちゃんはいいね〜。
美少女なカナちゃんが友達で嬉しいよ。

「まったく、ナマエもちゃんとすれば、とっても綺麗な髪なのに、美人が台無し…」

カナちゃんがぶつぶつ言っているのに構わず髪をなでくりまわした。







もうすぐ蒼凛祭!


私達剣道部は毎年恒例のお汁粉屋の模擬店を出す。

今日はその看板作りをカナちゃんとする約束だった。

『大体こんなもんか』

「後は立て掛けて少し乾かそうか」

『よっしゃ!私こっち持つ』

ひょいっと看板を持った瞬間


グキッッ☆


『!!!〜〜』

「どしたのナマエ?」

『こ、こひが……』

魔女の一撃が私に下る。
びりっときたよ!びりっと!!

『ぐっ、あべし!こ、こひがぁぁ……』

「ちょ、まさか腰?ぎっくり?」

わたしは心配そうに見つめるカナちゃんに涙目でコクコクと頷いた。

ヤバイ!マジ痛みがパネェ!
どんどん痛みが酷くなり、もう立つのがやっとこさ。
それはもう生まれたての小鹿のようにプルプルと震える二本の足。

「病院行こ!とにかく一番近いとこ」

眉根をよせるカナちゃん。
君にそんな顔させたくはなかったよ。
なんて冗談言ってる場合じゃなく、カナちゃんに大人しく従った。

歩くのもそろそろと生まれたての子鹿から、徐々にアウストラロピテクスにナマエは進化しました。

つ、つらい…

クララが立った時のほうがよっぽどスムーズに歩いてたよ。トホホ

カナちゃんが学校の前でタクシーを止めてくれた。

『カナちゃん…私座れないかがめない』

今度はすんごい時間をかけてタクシーに乗り込む。
一人スローモーション。

失って
 始めてわかる
   健康体

字余り!


「幕恋病院までお願いします!」

駅に向かう途中にある市民公園横の幕恋病院にカナちゃんと向かった。

持つべき者は親友。
なんて迅速な行動。惚れちゃう。
アンタのためなら焼きそばパンだって走って買ってくるよ。
腰が治ればの話だが…。


大の病院嫌いの私は、病院なんて10年ぶりぐらい。
熱だって38度ぐらいだったら自力で治す。
ってかあんま風邪とかも引かないし。
いや、私馬鹿じゃないからっ

なんて痛さを忘れるためにどうでもいいことを考えて整形外科の待合室で待つ。

「ミョウジさーん、ミョウジナマエさん」
 
「ほら呼ばれたよ」

『う、うん』

「診察室へどうぞ」

名前を呼ばれて、緊張してきた。
モジモジしながら振り返る。カナちゃん診察室について来て…くれないよね。
子供じゃないしね。
ぐすん

手はバランスを取るために何かを掴みとろうとするように広げられ、ソロソロとなるべく振動を与えずにすり足で移動する私は自分でも笑える。
決してゾンビのマネではありません。
ぷっ//
わ、笑うと腰が〜〜。


カララ

「お、どうしたっ!」

診察室に入ると先生とおぼしき人が太陽みたいな笑顔で迎えてくれた。
結構若い男の先生。

『ちょっと、腰が…』

取りあえずわたしは愛想笑いを返す。

「そうか。よし!診察台に横になれ!」

総合病院の先生ってもっとビシッーとしてるのかと思ったら、マンダリンカラーの柄シャツを第2ボタンまで開けて無造作に白衣を羽織っただけ。
確か外に「整形外科部長」って書いてあったよね?
これでも偉い先生なのかな?
こんな若さで部長って…それにしてもラフ過ぎる。
ネームプレートをみれば
「高杉」と書いてある。
高杉…先生ね。


「そんな状態でよくここまで来たなー。偉かったな!」

診察台に横になった途端、高杉先生は私の足を一本持ってゆっくり持ち上げる。
今日はズボンで良かったよ。もし、スカートだったらおパンツ丸見え☆
私のウサギちゃんがこんにちわするトコだよ。


「どうだ、これは痛いか?」

『痛いです!』

「じゃあ、これは」

『も、ものすごく痛いです!!』

「う〜ん、じゃこれは」

『いたい…かな?』

私の足を色々な角度にあげたり、ひざを折ったりして確かめていく。

「そうか〜文化祭の準備か。蒼凛の学生か。何の出し物だ」

『お汁粉屋です。毎年部の恒例で』

人懐っこい笑顔で気さくに話され、白衣恐怖症のわたしも落ち着いてきた。
なんか、この先生いいかも。


「よしっ!それじゃ…
ごわっっ!!

急に垂直に上げていた足を離されて、力の入らないわたしは高杉先生の腰にかかと落としをきめてしまった。
重力も手伝って何気にクリーンヒット!

ど、どうしよう。高杉先生うずくまっちゃった。

「〜〜お、お前っ!!」

うっ、
しかられる〜

『ごごご、ごめんなさい!』
「お前!いい度胸だなっ」

ニパって笑って八重歯をキラーン。


「気に入った!俺の女になれ」


へっ
………

なんでそんな展開に?
自信満々に急に何言っちゃてるの?
斜め上いく切り返しに、流石の私もついて行けない。

『け、結構です。それより腰をなんとかしてください!』


「即答かっ!少しは悩め。……レントゲン撮るぞ。
ミョウジさんレントゲン」

ご機嫌なまま看護師さん指示を出す。


「ミョウジさん。ではレントゲン室に案内します。」

呆気にとられたまま、整形外科を一旦あとにする。












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