03 レントゲン室へご案内

「ナマエ!どうだった?大丈夫?」

『カナちゃ〜ん。これからレントゲンだって』

「そっか、私道具出しっぱなしだから、一度大学戻るね。
ナマエ終わったら連絡して」

『うん、ありがとう〜』

本当は一人になりたくなかったけど、仕方ない。
私はこの戦地で生き延びてみせるよ。



レントゲン室は地下。
そこの待合室でポケッと待つ。
車椅子を勧められたけど、なんかそれは恥ずかしくて取りあえず車椅子に座らずに押して地下まで来た。

ヨチヨチ歩きの手押し車状態。

しかし、病院って綺麗だけど冷たい感じでやっぱり苦手…。


座っても、立っても腰の痛い私は取り敢えず他の人の邪魔にならないように、空いてるベンチによっこらせと座った。


ふと視線を感じて横を見れば、碧眼のようにも見える澄んだ瞳の美少年。
昔見た湖の底のように幾重にも様々な碧を重ねたような色。澄んでいるのに底が見えず、どこまでも深く続くような瞳。


あ、松葉杖…


「こんにちは」

『こ、こんにちは』

つい見惚れてしまった///
声をかけられて思わず顔にじわりと熱を持つ。
優しくニッコリと笑って、その魅力的な瞳が綺麗に細まる。

「辛そうだけど、大丈夫ですか?」

『はは、ちょっと腰を痛めて…』

「じゃあ、高杉先生のトコ?あの先生腕はいいから」

不思議な瞳を持つのに、笑顔は爽やかで眩しい。
パジャマ着てるから入院してるのかな?

「僕は足をちょっとね…。今入院中なんです。」

「足以外は元気だから、暇で…。今はあんまり動くなって担当医から言われてるけど、布団に苔生やしてるのは性に合わないし」


人懐っこく話されて、気持ちが綻んでくる。なんか話してたら元気でてきた。
なんていい人なんだっ!
そのまま他愛のない話をしていると

「ミョウジさん…」

『ふぁい!』

名前を呼ばれて見れば、ワイルドな感じの赤毛っぽいイケメンが睨んでる。

こ、怖い。

なんで、このレントゲン技師凄んでるの?地顔なのか?こええよ。


「ねえ、娘さんのお名前は?」

思わず固まってると、隣の美少年に聞かれハッとなる。

『あっ、ナマエです!ミョウジナマエ』

「僕は沖田総司。ナマエさんにまた、会えたら嬉しいな」

ニコリと微笑まれ、手をひらひらとふってくれる。

もうちょっと話していたかったな〜

はっ!レントゲン技師が睨んでる。
はやくせねば。

「沖田さんもお大事に!ありがとうございました」




慌てレントゲン技師のもとに向かう。
高杉先生といい、ここの病院はイケメンが多いね〜。
学校の近くあるのに知らなかったよ。


「…大丈夫ですか?」

私のアウストラルピテクス歩きに声をかけてくれる。
怖そうだけど、優しいのね…
心が弱ってるから染みるよ。

「服を脱いで、この服に着替えて下さい」

『はい』

「金属類は全てはずしておいてケータイの電源はお切り下さい」

『はい、分かりました』

シャッと脱衣場のカーテンが引かれる。

この、着物みたいな変な服着ればいいのね。

ん?待てよ?

全部脱げって言ったっけ?(全部とは言われてない)
この、へんてこ着物の下は全裸か?

『…………』

真っ裸で綿のごわっとした着物だけ?
嘘、みんなそうなの?
病院なんか来ないからよくわからない。
ましてやレントゲンなんて…

いやいやブラはともかく、おパンツはいいんじゃないかな…?
でも間違えてあの怖そうな人に「ごぅらっ〜全部脱げ言うたじゃろ。われ聞いとったんか〜」って凄まれるのも嫌だし。


…………
だ、誰か教えて〜
おじいさんでもモミの木でもっ!
……一旦ハイジから離れようか自分。

って、レントゲン室にはレントゲン技師と二人きり…
どうするナマエ!

ええいっ!

私は全裸になりヘンテコ着物を着て思い切ってカーテンを開けようと……

いやいや、待てよ。
落ち着いて考えよう。


高杉先生はレントゲンは両サイドの腰の撮影だって言ってた。
もし体を動かす時にこの着物みたいなのの裾がペロンってめくれちゃったりして…
だって裾短いし。

そしたら、私の密林(某巨大ネットショップでない)地帯が、そして大事な丘陵が見えてしまうではないか!
ウサギちゃんがこんにちわどころではない!

ラピュタの巨大飛行石のある場所が、ムスカによってポロポロと土が零れ落ちるような状態で私のジャンゴーも曝されるのか。


シータよく考えてみよう。
パンツははいててもいいんじゃないのかな?
金属入りパンツじゃないしな。
金属入りパンツってどんなだ?

でもな、でもな。
パンツはいて行って「パンツ脱いで下さい」って言われるのもな。

それも、かなりハズかすぅぃ。

ヤバイ頭混乱してきた私は思わず…




●パンツを履く
●パンツを脱ぐ
●技師に聞く






やっぱり聞こう。
聞くは一時の恥、知らぬは一生の恥だ。

そこで私はカーテンを開け
『すいません、パンツは履いてていいんですか?』

一時の恥を選んだ。


「……………」

『…あの……』

フリーズしてるよ…
ポカーンって
天使が通ったような沈黙のあとちょっと顔を赤らめ、視線を斜め下に外してレントゲン技師は答えた。

「ええ、下着は金属が入っていないものならいいです。」


視線を上げた瞳と合う。

既に赤らめた顔はなく、ため息一つして、むしろ見たくないよ、お前のなんてと蔑んだ目に変わる。

悪かったなっっ!


『すみません…パンツはいてきます…』




「はい、ではここに立って。腕はここに…」


パンツ会話のあと、こいつアホじゃねぇ?的な視線をビシバシ受けつつ、撮影されてレントゲン終了。


レントゲン撮影を終え、またカーテンの向こうで着替えていると


「♪ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー♪」

更に追い打ちかえるようにあやまんJAPANの着うたが鳴ってしまった。
ヤバイ
ケータイの電源おきり下さいって言われたのに…。
しかも間抜け過ぎる選曲。

非常にバツが悪い。。。


ピッ
取り敢えず慌てて電源オフ
カーテンを開ければ憮然とした顔。

『ははは…』

「では、整形外科の待合でお待ちください」

またしても、呆れ顔にため息ひとつ&蔑みの眼差し。
優しいなんて思ったのに損したよっ


でも…

痛さでモタモタと動きの悪い私を急かさず待ってくれたよね。
やっぱり優しい…のかな…?


バチリと目が合った途端に、ふんっと今日一番の蔑む眼差し。

前言撤回!!

ナマエは可哀想な子じゃありませんからっ

レントゲン室を出たところで振り返り入口のプレートを見る。


【本日のレントゲン技師 岡田】


岡田…ふっ、アンタの顔は忘れないよ。

あんな、無愛想な顔してマンモとかも担当するのかね〜

バイト先のお姉さんからマンモ検査に行った話をこの間聞いた。
ガラスの板みたいなのに乳を挟んで、とてつもない凄い力で乳を押し潰されて、そのまま板ごと斜めにされて、乳が引きつったりですんごく痛いらしい…

挟むほど乳ねーし。
岡田には胸みせねーし。
マンモ撮らせてやらんからっ

と訳のわからない怒りを抱えて整形外科へ戻った。
(自分の無知ゆえの八つ当たりと人は言う)







※マンモ…(マンモグラフィ)乳ガン早期発見のために人の乳房をX線撮影する手法、またそのための乳房X線撮影装置のこと。


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