08 中休み
俺は夜勤から昼までの勤務が終わり廊下を歩いていた。
午前の診察が終わり、ほとんど人のいない廊下。
あの先にいるのは…慎太か?
それと…一緒にいるのはレントゲンを撮りにきた妙な女。
慎太は土佐医大で一緒だった仲間だ。
俺はレントゲン技師を目指したため先に卒業したが。
先生と共に医療の道に進みたいと考えていた俺だったが、あいにく医者になるような頭を持ち合わせていなかったため、レントゲン技師の道を選んだ。
先生の思想に感銘を受け、少しでも先生の力になりたいと考え。
慎太はあの女と知り合いか?
廊下の先で斜めに入り込む陽光を受けて
楽し気に話す二人の背中をじっと見据えた。
立て続けにレントゲンを撮りにきた女。
確か…ミョウジといったか。
最初に来た時は腰を痛めたようで、凄く辛そうだった。
折れそうなほどの細い腰。
亜麻色の長い髪。
どこか儚げで淡く微笑む横顔。(ただの焦りと憤慨から)
綺麗だ…
初めて会った時、柄にもなく見惚れてしまった。
フッ、それにしても
今どきレントゲンの撮り方なんて中学生でも知ってると言うのに。
アタフタしている様がまた気になってしかたがなかった。
病院いらずで健康に育ってきたんだろう。
純粋な汚れを知らない女か…
(思考は汚れまくってるけど)
そういえば脱衣室でブツブツ呟いていたな…。
ハッ!
もしかして一人で着替えが困難なほど痛みが酷かったのか?
悪いことをした。
もう少し気を使ってやればよかった。
でも俺に何ができる?
着替えを手伝うなど到底無理な話だ。
それにしても今日は先生のところとは…
アイツ先生に迷惑かけなかっただろうな。
……
先生の前で失態を見られてしまったな。
ミョウジ。
また来るかな…
いかん!
俺は何を考えているんだっ!
病院なんか来ないにこしたことはないっ!
そういえば沖田のヤツとも話していたな。
沖田とも知り合いなのか?
慎太と沖田…
楽しげにそれぞれと話すミョウジの姿を思い出し
俺は少なからず苛立ちを覚えた。
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