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夏祭り
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「ヒメコちゃんほっそー」
「ホントどうしたらこんなプロポーションになるのかしらね」
「いややわぁ褒めても何も出えへんで?」
「だってホントに細いしスタイルいいんだもん!ルミ憧れちゃうなー」
扉の向こうで、母ちゃんとルミと、ヒメコの声がする。
何故こんなことになったかといえば、
前日にこんな話をしたからだ。
「お兄ちゃん、明日はちゃんと家にいてね」
理由は分かっていた。
毎年この時期になると、あらゆるお祭りに連れ去られるのだ。
主に荷物持ちとして。
以前は普通に友達と祭りに出向いていたが最近はなんとなく、家族で行くようになった。
「あー明日はダメだ」
「えー!?なんでよ!?」
「ヒメコとスイッチと一緒に行くことになったんだよ」
「あら、そうなの?」
「母ちゃんいたのかよ」
どうやら今帰ってきたらしい。
「ねえ、それなら…はいこれ」
「なんだこれ」
手渡された大きめの紙袋を覗く。
「浴衣と甚平よ」
どうやら仕事で使ったものらしい。
「浴衣はルミに、甚平はユウスケに、と思って持って帰ってきたんだけど…どうせならヒメコちゃんとスイッチくんに。どう?」
「いや、んなこと言われても」
「絶対似合うわよ!」
「そうね、お兄ちゃんなんかよりスイッチのほうが似合うんじゃない?」
「そうよね」
「ひでーなそれ」
「とにかく、明日二人とも家に連れてきなさい」
「なんでだよ」
「私が着付けするわ」
「人の話聞けよ」
「いいから連れてきなさい」
「………」
「いい?」
「…はい」
結局、母ちゃんの目力に負け、連れてくることになった。
そして、今。
スイッチは着替え済で、ヒメコは隣の部屋で母ちゃんに着付けされていた。
「おせーなあ」
暇潰しのテレビを見ながら呟いた。
『ボッスンは着替えないのか?』
「お前らの分しかねえんだよ」
「お待たせしましたー!」
「おーやっと終わったか」
テレビから視線を外さずに返事をした。
「ほらもっとリアクションしなさいよ!」
「あーいいんじゃねーの」
「もっと言うことないの?まったく、これだからお兄ちゃんは」
ルミが「ねー」とヒメコに同意を求めていたのがチラッと見えた。
「まあ、いつもあんなんやからなぁ、アイツは」
「じゃあ、もうそろそろ母ちゃん達は時間だから行くわ」
「もうそんな時間か。んじゃ、オレたちも行くか」
「人多いなー」
「まあ、お祭りやしな」
会場は、友達同士、カップル、家族、と様々な人で溢れていた。
「スイッチお前よくこんな状況でパソコン開いてられるな」
『まあn』
「打ててへんやないか!」
『大丈夫だ問題ない』
「そこはバッチリなんやな…あれ、ボッスンは?」
いつの間にかいなくなった赤ツノを探す。
『あそこだ』
スイッチが指差す先には出店があった。
「射的やん!アタシもやりたい!」
『オレもやるぞ☆』
「アンタノーコンやろ!あれや、どうせ店の人に当たるオチやって!」
『そんなことはない。オレはやるぞp(^^)q』
「どーなってもアタシ知らんで?」
「集中!」
バシッ
「ってーな!何すんだよ!」
「集中モード使ったら反則や!」
「そんなルールねえだろ?な、スイッチ」
ボッスンは隣で射撃中のスイッチに同意を求めた。
しかしスイッチの返答はなく、
かわりに弾がこちらに向かってきた。
「いてっ」
速度はそこそこなものの、こめかみに当たると地味に痛い。
『ミスった』
「ミスとかのレベルじゃねーよ!」
どうやら、景品に当たった弾がそのまま跳ね返ってきたらしい
『本当にすまないと思っている』
某芸人のネタを声質を変えてスイッチは言った。
「古いうえに謝る気ゼロだろ!」
『まあまあ』
「アタシもう弾無くなったでー」
射撃センスがあるのか、ヒメコはそこそこの景品を手に言った。
「おっしゃ!オレ一番デカいの狙うからな!見てろよ!」
「いくらなんでもそれは無理やろ」
「えーっと、弾どこやったっけなー…あれ、あと二発分あったはずなんだけど…」
ボッスンは、辺りを見回したり、ポケットに手を入れたりしていた。
『オレが使った』
「え、マジで?」
『マジだ。本当にすまないと思っている』
「もうええっちゅーねん!んで、アンタもそんなへこむなや!子供か!」
「ああオレ子供だよ!?子供だからもう一回やるお金もないんだよ?あーあせっかく楽しみにしてたのによー…」
段々とテンションの低くなるボッスンを横目にヒメコは呟いた。
「スイッチなんでボッスンの弾使ったん?完全に拗ねてもーたやないか」
『気がついたら手が勝手に』
「そんな痴漢みたいな理由で使ったんか!?とにかくはよアイツの機嫌取れや」
スイッチは少し考えて、1メートルほど離れたボッスンのもとへ向かった。
『ボッスン、次は金魚すくいにいこう。オレが奢るぞ』
「…射的がいい」
『…』
「…」
『…じゃあ、これでもう一回どうだ?』
スイッチは座り込んでいるボッスンの手に小銭を握らせた
「いいのか?」
『ああ』
「いや、でもよ…」
『オレのせいだからな』
「…じゃあ、三人で」
「やったー!ペロキャン当たったー!」
「お前そんなの狙ったのかよ」
「30本やで?お得やん!そういうアンタはなんや?何取れたん?」
「オレは銃だ!」
ボッスンは、いかにも安物なおもちゃの銃を構えた。
「ダッサ!こんなもん100均で買えるやん!」
「買えねーよ!思い出は100均じゃ買えねーよ!」
「かっこよく言おうとしても無駄や!んで、スイッチは何か取れたんか?」
スイッチの手には愚民グミが握られていた
「スゴいな!アンタノーコン直ったんちゃう?」
『いや、これはボッスンに貰った』
「そうなん?」
「…弾が余ったからな」
「ふーん」
「よし、次金魚すくい行こうぜ!スイッチ奢ってくれんだろ?」
『………ああ(今射的奢ったんだがな)』
こうして三人は様々な出店に寄り道しながら金魚すくいに向かったのだった。
[end]
長いわ!
スランプなのがよく分かりますね。
ホントは帰宅までのくだりを全て書きたかったんだが、
書ける気がしなかった…!長かった!
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