やがて正夢となること 不思議だ。 ミチルの後ろ姿が見える。 後ろ姿。後ろ姿であるのにその表情が見えるのだ。 微笑んだその顔は見慣れたはずの顔で、しかし何処か他人のような雰囲気だった。 夢だ。 ふと目が覚めたのは真夜中でこれは一体何の夢だったんだと思いながら何とはなしに携帯電話を手に取った。 きっと寝ているだろうが遠慮はしない。夢に出て来やがって、と文句を言ってやろう。そう思っていれば呼び出し音が途切れた。 『もしもーし?』 やけに間延びした声がした。てっきり寝起きで不機嫌な声がすると思っていたが違ったらしい。 「ミチル?」 『なにーあがたぁ?』 おかしい。いや大体想像はつくが。 耳を澄ませば電話の向こうはかなり騒がしくやはり想像通り飲みの席にいるらしいということが分かった。 これは嫌な予感がする。絶対酔っている。アルコールに弱いことは把握しているだろうから飲んではいないだろうし、数年前に比べていくらかマシになっているとはいえ匂いに酔っているはずだ。 すると電話先で誰?知り合い?と男の声がして耳を澄ましていればその男が電話に出た。 『あ、榛葉と仲良い人?悪いけど今から迎えに来てくんないかな?』 聞けばどうやら相当迷惑しているらしい。一刻も早く連れて帰ってくれとのことだった。面倒くさいと思ったがすっかり目も覚めてしまったし何より気になって眠れない。適当に着替え素早く家を出て車に乗り込んだ。 先程の電話で聞いた場所に行き駐車場に車をとめて店へ歩みを進めながらミチルの電話を鳴らせば入口のずっと先にミチルの姿が見えた。両脇から男二人が支えているらしい。そのまま店内に入り、ミチル!と声を掛ければあれ?あがた?と不思議がられた。 そのままその場にいた奴らに挨拶をしてミチルを引き取って車に乗せてやった。 財布やケータイがあることを確認して駐車場に設置されている自販機で水を買ってやり車に戻ればミチルは寝てしまっていた。暴れられなくて良かったと思った。 そのまま家まで戻ったはいいが車から連れ出すのは相当苦労するだろうと踏んで逆に家の中から毛布を持ってきて掛けてやった。 自分だけ家の中に戻るわけにもいかず、暫く携帯を弄ったりラジオを聴いたりしていい感じに眠気がした頃に座席を少しだけ傾けて眠った。 やはり深い眠りに落ちることは出来ないらしく俺はまた夢をみた。 バラバラに割れた鏡と血塗れになったミチルの姿がそこにはあった。 それはかなりぼやけて見えて目が覚めた時俺の心拍数はかなり上がっていた。 この夢がやがて正夢となることを俺はまだ知らなかった 2013/04/21 To be continued...? |