年が変わるにつれ深まっていく仲


「ルミーお茶ー」
新春番組から目を離さずに、リビングに入ってきたルミにお茶を入れろと頼む。

「はい」
なんだお茶買ってきたのかと振り向けば渡されたのはハガキの束だった。束といっても数枚だ。
「年賀状かーオレ1枚も出してねーな…」
ルミが手に持っていた年賀状はあと2束に分かれており明らかに俺の年賀状が少ないことが分かった。まあ今時の学生、ましてや男子高校生なんかそんなもんだろう。
そんな時代に数枚だが自分宛ての年賀状がある。誰からだろうかと少しワクワクした気持ちで年賀状に目を通す。

「年賀状っつーか…」
ダイレクトメールだった。俺のワクワクを返せ。っていうかルミもルミでこんなもん混ぜんなよ。

再びハガキを一枚ずつ見ていけば見覚えのある絵が現れた。
「ロマンだな、これは…」
表面を見てみれば案の定、ロマンの名前があった。そういえば住所を教えてくれと言われたことがあった気がする。
「ヘビは分かんだけどあとはさっぱりだな…」
ロマンのハガキを一番後ろに重ね、次のハガキに目をやる。
「…いや、まあ予想はしてたけどね」
葉書一面に書かれた賀正の2文字は期待を裏切らなかった。椿だ。

ソファに無造作に放ってあったケータイを開き当人に電話を掛ける。

『もしもし』
「お前何この年賀状」
『何って…』
「絶対やると思ってたからなーびっくりはしねーけどなーもっとこう斜め上の発想とかさー無かったのかよー」
『べ、別になんだっていいじゃないか!』
「別になんだっていいけど面白味がねえんだよ!」
『年賀状に面白味はいらないだろう』
「正月の暇さナメんなよ」
『勉強でもしたらどうだ』
「新年早々勉強なんかしたくねーよ」
『初詣は?』
「夜行った」
『親戚に挨拶とか』
「親戚っつっても母ちゃん忙しいから何年も前から行ってねーよ」
『そうか』

会話が途切れ聞こえてきたのは椿の名前を呼ぶ声と複数の声だった。

「お前今何してんの」
『ボクの家は病院だ』
「…だから?」
『正月でも診察や急患があるからな』
「お前が忙しいわけじゃねーだろ」
『手伝いだ』
「それにしては賑やかな声が聞こえんだけど」
『休憩中の看護師達だ』
「お喋りの相手させられてんのかよ」
『そんなところだ』
「お年玉とか貰えんの?」
『卑しいぞ』
「いいだろ別に」
『断ってはいるんだが強引にポケットに入れられる』
「うわーなんなのお前!ちょっと今からオレになんかオゴれ!」
『誰が貴様なんかに…いや、分かった。奢ろう』
「え、マジで?」
『ああ』
「珍しいこともあるもんだなー…あ、でも手伝いしてんだろ?」
『少しくらいなら大丈夫だ』
「お堅い椿でもサボりたいことがあんだな」
『サボりではない。休憩だ』
「看護師さん達の相手が苦手なんだろ」
『得意ではないな』
「素直に言えばいいのに」
『もう切るぞ』
「あーじゃあとりあえずそっち行くわ」
『出来るだけ早く頼む』
「どんだけ看護師さん苦手なんだよ…」
『うるさい!』
「はいはいじゃーなー」


とりあえず寒くない格好に着替えて財布とケータイをポケットに入れ外に向かった。



年が変わるにつれ深まっていく仲



「遅いぞ」
「何してんの」
「見て分かるだろう」
「庭掃除?」
「ああ」
「昨日大掃除したんじゃねーの」
「暇だったんだ」
「逃げてきたんだろ」
「…いいから早く行くぞ」
「どこに?」
「何か食べに行こう」



年賀メール
2013/1/1


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