巫女近似


年末年始もスケット団の活動をすることになった。
神社の手伝いだ。
毎年数ヶ月前から手伝いの募集が出ているらしいがどうにも数が足らないということだった。



「似合ってねーな」

正直。正直なことは良いことだ。けどこういうのはもっと褒めるべきではないのか。
(確かにどっちかっていったら似合うてへんけど)
巫女服なんて一生に一回着るか着ないか、いや大半の人は着ないだろうそれを今着ているのだからもっと気の利いた言葉はないのか。
この男にそんなこと出来るわけないのだが。

まあ似合うてるて言われてもどうしたらいいか分からへんけど。

「こっから下はカンペキなのに」
ポケットから出した右手を前に翳した。
ボッスンの視界からは私の頭部が消えているのだろう。この金の髪が。

「どういう意味やそれ!褒めてんのか貶してんのかどっちやねん」
「両方じゃね?でも9割カンペキ」
「あと1割くらいオマケせえ」
「いやだって巫女さんっつったらアレだろ」
ボッスンの視線の先には同じ巫女服を着た子がいて、綺麗な黒髪を後ろで結ったいかにもな格好だった。

「ああ、あれな今からやんねん」
「今から?」
「別にそのままでもええらしいんやけどやっぱ目立つやろ」
「金髪の巫女さんなんかいねえもんなフツー」
「アンタはもう準備終わったん?」
「おう!運ぶだけだかんな」
ボッスンは年明けと共にみかんを配るらしい。

「あ、そうだこれ」
「ん?」
「これやるから頑張れよ」
「おお、なんやみかん?…ちゃう!え、かぼちゃ!?」
「いやいやみかんだって」
「どう見てもかぼちゃやろ!なんでハロウィンやねん!」
それは確かにみかんなのだが表面にはハロウィンのジャックランタンのような顔が描かれていた。

「ハッピーニューイヤー!」
「ハロウィン気分でよくそんなこと言えるなお前!ていうかまだ年明けてへんぞ」
「オレはもう年を開ける準備万端だ!」
『ヒメコ、』
「おお、スイッチ!そっちも準備終わったんか?」
『ああ。…似合わないな』
「うっさいわどいつもこいつも」
『呼ばれていたぞ』
「おお、そか。ほな行ってくるわ」
『髪か?』
「せや。順番回ってきたんやな」
『誰か分からなくなるに一票』
「そりゃあ色も長さも変わるんだもんな〜」
「さっきの1割カンペキにしたるからな!待っとけよ!」
歩き出しながら捨て台詞のように完璧な巫女になる宣言をした。

「みかんちゃんと食えよ!ウマそうなの選んでやったんだから」
「はいはいほな後でな」



巫女近似



「どや!似合うやろ」
「似合わないこともねーけど違和感あるな」



年賀メール
2013/1/1


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