黒リエ


テーブルの上に置きっぱなしの携帯電話が盛り上がる飲みの場を邪魔するかのように鳴り響いた。
その画面を隣の奴が覗き込んだのを見て黒尾はすかさずそれを手に取り通話状態にした。
「誰だよ、りえちゃん」
「彼女かクソッ」
友人達の言葉を聞きながら黒尾は席を立った。
「もしもし」
『いい加減やめてくださいよそれ』
リエーフの差すそれは黒尾の携帯電話に登録されているリエーフの名前のことだ。
「いいだろベツに。アイドルと同じ名前だし」
『嬉しくないですけど』
「まあリエーフも女っぽい響きだけど外国名だと余計ツッコまれるしなー」
『どんな反応されるか試してみたらどうすか?』
「面倒避けるために電話させてんのに自分から面倒事に巻き込まれに行くとかねえよ」
『大体面倒なら行かなければいいんですよ』
「飲みてえし」
『家で飲めばいいじゃないすか』
「一人とかつまんねーだろ」
『俺付き合いますって』
「お前飲めねーじゃん」
黒尾は数ヶ月前に20歳を迎えたがリエーフはまだ高校生である。
『そこで飲むより楽しめると思いますけど』
それほど仲がいいわけでもない奴らと飲むかそいつらが言うところの彼女と飲むか。
「じゃあ今から楽しませに家来いよ」
『ノンアル買って来てください』
「了解。じゃあな」
黒尾は通話を終了しながら仲間達のもとへ戻った。早速電話相手の人物像について質問が飛んでくるが答える代わりに残っていた酒を煽って荷物に手を掛けた。



2014/01/11
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