永翼 「ん…永田…は、いないんだったな…」 翼の朝は永田に起こされる事から始まる。 目覚まし時計で起きる事が出来ればそれでいいのだが生憎翼は目覚ましが嫌いだった。 だがしかし永田はお盆休みであるため昨日から翼は適当な時間に目を覚ますことになっていた。 仕方ない、と眼鏡を手に取り翼はベッドから出た。 永田は休みだがシェフは勤務しているため餓死する事もないのだが事あるごとに永田に頼る翼は物事が思い通りにいかない事にストレスを感じていた。 ベッドルームから出てリビングのドアを開ける。規定の時間になれば配膳されるよう永田がシェフに手配していたから昨日のように朝食か昼食があるはずだと翼は思っていたのだが何も見当たらなかった。 リビングを見回してから面倒だが厨房を覗きに行くか、と考えたところでふと声がした。 「翼様」 「…永田?」 休みのはずの永田がリビングの奥から現れ翼は一瞬目を疑った。 「何故永田がいる?」 「翼様の誕生日をお祝いさせていただくためでございます」 「ふん…そうか」 昨日は覚えていたのだが、翼は起きてからここまでの数分、今日が自分の誕生日だということを忘れていた。 「さすが永田だ。この真壁翼の誕生日を祝い損ねるなどあってはならないからな!」 「喜んでいただけたようで何よりです」 「喜んでなどいない!驚いただけだ!」 翼が起きたのを見計らったかのように永田は運ばれてきた昼食をテーブルに並べた。 お待たせしました、と永田は誕生日仕様のメニューを説明していたが果たして翼はそれを聞いているのだろうか。既に出されていたドリンクに手をつけて鼻歌を歌っていた。 2013/08/14 |