及←国


「俺、雪踏むの好きなんだよね」
雪水で濡れたアスファルトの道を逸れ、新雪が五センチ程積もったままのそこへ二十数センチの足形をつけて及川は言った。
「今まであった高さが一瞬で無くなるのが楽しいんだよ」
「はあ…」
「ここの雪は簡単に踏めるけどさ、あそこの雪は簡単には踏めないんだよねー」
及川が差す場所にも同じように雪は積もっている。
「なんでですか?」
「踏んで確かめてみなよ」
国見は及川に言われるがままに三十センチ以上雪の積もっている場所へと右足から踏み入った。
雪を踏みしめようとした途端、体重を受け止めきれなかった上の方の雪が押しつぶされて下に凝縮されていった。
気付いた頃には左足も同じように沈んでいっていて慌てて足を抜こうとするがなかなか抜けない。
「踏んだ罰として捕われるんだよ。甘く見るなってね」
逃げようと思えば逃げられるけど怖いよねえ、と手を差し出した及川が既にそんなふうに誰かに捕われているということを再認識しながら国見はその手を掴んだ。
国見は及川の手に引っ張られるようにして足を抜いていった。途中、この手を思いっきり引っ張って及川もここに落として一緒に捕われてしまえばいいと思ったがそれは出来ずに国見は及川に救助され脱出した。
再び浅く積もった雪を踏んで歩く及川の靴裏には踏んで潰れたはずの雪がぴったりくっついていてやはり及川は捕われたままだった。



2014/02/05
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