金の代わりに



約束の時間に遅刻してきた安形は遅刻の言い訳を、マンホールから地底人が出てきてなんたらととても頭の悪そうな発言をした。暑さで頭がやられたのだろうか。

「しっかし、いい天気だなー…オレの財布みたいだぜ」

「は?」

「カラカラ」

「…ツッコまないよ」

「ついでに喉もカラカラなんだけど」

「それはつまり奢れと?」

「いやあ、財布は持ってきたんだけどよー」

安形はポケットから財布を取り出して開いた。

「空っぽなんだわ」

「カラカラってマジだったの!?なんでだよ!せめて十円とか一円とかレシートとか出てくるだろ!」

「いや、昨日財布変えたの忘れてた」

財布を逆さまにして何か入ってないかと振ってみれば、ポロッと何かが落ちた。

「お?」

「何か落ちたよ」

しゃがんでみれば、それは所謂情事の時に使うゴムだった。

「何入れてんだよ」

「ナニ入れるヤツだけど」

「上手いこと言わなくていいよ!」

「いや、ちょっと前に流行っただろ?財布に入れとくと金運アップするってやつ」

「金運ねえ…」

「因みに財布はタンスとか暗い場所に置いとくと金運アップだ!」

「なんか絶対誤魔化そうとしてるよね」

「まあアレだ。あわよくば使おうと思って入れといた」

「最低だな!今その財布落としたら拾った人もどん引きだよ!」

「もういいから早く金よこせ」

「カツアゲか!大体人に物をお願いする態度じゃないよね!?」

「お金を貸してくださいミチル様」

「いやまあ別にジュースくらいなら奢るけどさ」

「嫌だとか言わねーんだな」

「自分の分だけ買うなんてことしたら何されるか分かんないからね」

「口移しとかやるか?」

「やらないよ!何のために奢るって言ったか聞いてた?」

「さあな」

暫く会わない間に面倒くささが増したらしい。

「で、どこ行くんだっけ?」

「どこって安形がとりあえずどっか行こうぜとか言ったから今ここにいるんだけど」

「んじゃまあミチルん家いこーぜ」

「結局家かよ」

「メシ食ってねえからなんか食わせろ」

「コンビニでおにぎりでも買えばいいじゃない?」

「金ねーよ」

「…じゃあ500円あげるからなんか買ってきなよ」

「ミチルの手料理じゃなきゃ嫌だ」

「わがままだな…」

「オレが夏バテして倒れてもいいのか!」

「いいよもう倒れろよ」

「なんで今日そんなに機嫌悪いんだ?」

「どう考えても安形のせいだろ!」

「そうか…すまん…これをやるから許してくれ」

「何…ってこれコンドームだろ!いらないよ!謝罪の品がコンドームってどんなだよ!」

「声デカいぞー」

「…もういいよ…オレもまだ昼食べてないし早く家行こ」

「おほっ!許してくれたのか!じゃあ仲直りの記念に一発ヤらね…」

「やらないよ!」





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