知らない味の思い出 ガコン、カラン、シュワっと順に3つの異なった音がした。 ボッスンがラムネを開けた音だ。 「うおっとっと」 炭酸が上がってくる前に急いでビンに口をつけゴクリと飲み干す。 『ボッスン、』 「んあ?」 『オレにも一本くれ』 「お前炭酸飲めねーんじゃねえの?」 『開けるだけだ』 「開けるだけ?」 『見ててくれ』 ラムネを受け取り飲み口についているビニールを剥がし、栓を開けるプラスチックを右手に持ち左手で瓶を机の上に固定した。 右手にグッと力を入れれば先ほどと同じような音がした。 ビー玉が落ち、炭酸が上がってきても栓抜きは抜かずに押さえたままだ。 そして暫くしてから手を離した。 『こうすれば溢れないぞ』 「…ちょっと溢れてんだけど」 『久々にやったからな。大目に見てくれ』 「飲めないのに開けたことあんだな」 『…まあな。よく開けてやっていたんだ』 「そっか」 知らない味の思い出 |