青春ライン つい先ほどまでソフト部の助っ人に出向いて炎天下の中白球を追っていた。 「あっつ…」 日陰に座り込んで額や首に流れる汗をタオルで拭う。 「おつかれー!」 「おう…元気やな、キャプテンは」 「毎日これだもの、慣れよ」 スポーツドリンクや冷却スプレーと制汗スプレーの類がいくつか目の前に置かれた。 「どれでもどうぞ」 「準備万端やな」 とりあえずまずは水分補給、とスポーツドリンクを手に取りキャップを開けた。 冷えたボトルは手のひらの温度を少し下げた。 「ヒメコちゃんは宿題終わった?」 「まだ全然や」 飲み口に口をつけ傾ければ舌の上から喉へと流れ渇きが潤された。 所謂青春をしているような気になる味だった。 「ウマい!やっぱ汗かいた後に飲むのが一番やな!」 さっきまで隣にいたはずのキャプテンに話しかけたつもりだったがその姿はなかった。 そのかわり後ろに気配を感じ振り向こうとすれば、シューッという音がして首から背中にかけてひんやりとした空気が流れた。 「ぎゃっ」 「どう?冷えた?」 後ろにいたのはキャプテンで手には制汗スプレーが握られていた。 「なるほど。一石二鳥やな」 お返しに、ともう一本の制汗スプレーで同じようにキャプテンの首もとからスプレーをかけた。 「中学の時に教室でみんなで使ってたら先生に怒られたことがあったのよね」 キャプテンの話では、男子の間では消臭スプレーが流行っていたらしい。 想像すると少し違和感のある絵面だ。 「さてと、そろそろ帰ろか」 「そうね。でもその前に、」 キャプテンは近くの水道を指した。 「顔と足も冷やさない?」 「せやな」 水道は日が当たっていて蛇口を捻ってすぐはお湯しか出なかったが次第に元の冷たさに戻り、思いっきり顔と腕と脚を濡らした。 普段こんな風に部活で毎日汗をかいているわけではないだけにこういう経験は結構楽しいものだな、と思った。 |