流しそうめん



夏休みでも週に2回は部室に集まることになっている。
炎天下の中毎日のように部活に励む生徒のためである。



「高さはこんなもんでいいのか?」

『ああ』

「隣の竹藪に竹立てたけたの誰だ」

『噛んでるぞ』

「そうめん茹でてきたでー!」

「おお、ナイスタイミングだな!」

部室の窓から外に向かって竹を立てかけてあり、麺と水を流すのは部室の中からということだ。
いつ依頼人が来てもいいようにとこのような形になった。

「箸とつゆは?」

「アタシ知らんで?」

『ここだ』

「あれ?竹で出来てる!?」

『せっかくだから箸とお椀も作ってみた』

「お前スゴいな!」

『食べにくいなら割り箸と紙のお椀が机の上にあるはずだ』

「ええやん!こういうの雰囲気出るで!」

「早く食べようぜ!」

「ほな流すん3回交代な」

「よしこい!」

「いくでー!」

竹の最上部に麺を置き、ペットボトルに汲んでおいた水を流す。

「1人じゃやりにくいやろこれ」

「よしきた!」

掴んだ麺をつゆに浸してズズッと吸い込む。

「ウマい!やっぱ家で食べるそうめんとは全然ちげえな!」

『流れてく麺を取って食べるという工程がゲーム感覚だからな』

取り損ねた麺は下でざるに溜まり、水はざるの下に広がるビニールプールに溜まっていくようになっている。

「アタシも早く食べたい!」

「3回交代だろ」


一通りローテーションで流す担当を代わったところで、通りかかったのは最も遭遇してはいけないであろう連中だった。


「何をしている」

「やべっ」

「よお椿!見回りか?大変やなあアンタも。ほれ、そうめん食べるか?」

「いや、ボクは」

「まあ!これはなんですの?」

「流しそうめんか」

「ミモリンとデージーさんも食べてきー!」

「では、頂くとしよう」

「浅雛、見回り中だぞ」

「椿くんも一緒に食べましょう!」

「いやしかし…」

「もうすぐお昼ですし、せっかくですからご馳走になりましょう!わたくしそうめんという物は初めて食べますわ!」

「む…では、少しだけだからな」


「なんだかんだ言って甘いよな椿」

「せやな」

「何か言ったか?」

「いや別に」




こうしてそうめんは当初の予定より早く流れていった。

色のついた麺がオレのところに流れてこねーと文句をいうボッスンに子供だな、と椿が呟いたことによりケンカが始まったりと、夏休みだろうと相変わらずの日常だった。





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