~2012.06.30



暇だなあ、と漫画を手にしたところで机の上の携帯電話が着信を告げた。

「メールか」

漫画を左手に持ち右手で携帯を開き、送られてきたメールに目を通せば、それに本文はなく画像が一枚添付されていた。

「…なんだこれ」

画像には所謂ウェディングドレスを着たヒメコが笑顔で写っていて、よく見ると見切れてはいるが誰かと腕を組んでいた。
どういうことだろうか。

メールを閉じ、着歴からヒメコの名前を探し通話ボタンを押し耳に当てれば1コールで繋がった。



「何あのメール」

「きれいやろ?」

「いや、まあ」

「どっちやねん」

「全然状況が読めないんだけど」

いや、大体想像はつくのだけれど。

「結婚すんねん」

「分かりやすい嘘だな」

「モモカの撮影見に来てん」

「んなことだろうと思ったぜ」

モモカの撮影の見学だとして何故ヒメコが着ているのかは分からなかった。

「で、なんでお前が着てんだよ」

「なんか流れで着せて貰うてん」

「ふぅーん…」

「びっくりしたやろ?」

「びっくりなんかしてねえよ!」

「うそつけ!びっくりして電話掛けてきてもーてるやん!」

「そりゃあ、あんな画像送られてきたら意味わかんなくなるだろ」

「モモカのも今送ろうと思っててんけど」

「一回で送れよ」

「驚かせよう思ってな」

「大体結婚するわけでもねーのにドレスなんか着たら婚期遅れるんだぞ」

「そんなん迷信やろ」

「ていうかなんでお前だけモモカの仕事見に行ってんの?」

「アタシだけちゃうで」

「もしかして…」

「スイッチもや」

「ずりーぞ!なんでオレだけ置いてくんだ!」

「アンタこんなん興味無いやろ」

「オレだって見たかったっつーの!」

「残念やったな!」

遠くでスイッチが喋っている音がした。

「あ、撮影再開するって!ほなボッスンまたなー」

返事をする間もなく電話は切られ通話時間が表示された画面を見つめていると、再びメールが届いた。

「さっき言ってたヤツか」

ヒメコから届いたそのメールを開けばこれまた本文は無く、モモカの写メだけが添付されていた。

「…まあ、2人とも似合ってるよな」

その後、再び送られてきたメールにはタキシード姿のスイッチが写った写メが添付されていた。これまた違和感はなくて、もし自分が着たらきっと似合わないだろうなと苦笑しながら携帯を閉じた。






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