目に見える愛



ついてくるなと言われれば、逆らうわけにもいかず心配しながらもついていくことはしなかった。
誰にだってプライベート、プライバシーがあるからだ。

だが今日は違った。いつもは二人で帰っているのに、今朝「今日は用事があるから先に帰ってくれ」と。

気になったオレは後をつけた。




-----目に見える愛




校門を出た会長は会長の家の方向とは逆の道を歩いていた。
そのまま後をつけると、前方に見知った顔があった。


「お早いですね安形さん」

「意外とか思ってんだろ」

「…ええ、まあ」

「途中で抜けてきたからな」

「サボりですか」


オレの位置からは会長の表情は見えないが、いつも通りのような会話が聞こえた。

「じゃ、行くか」

どこ行くんだ?会長は学校帰りに寄り道をするような人間ではないはずだ。
とすれば、安形に強引に呼び出されたのか?

「安形さんが一緒で安心します」

安心?何に?

「お前こういうのしたことなさそうだもんな」

いったいなんなんだ。会長はやっぱり、付き纏うオレなんかよりアイツの方がいいのだろうか。

「なんや加藤やん!何しとんこんなとこで!」

人混みに紛れながら後をつけていたオレに話し掛けたのはまたも見知った顔だった。

『パシリか?』

「ちげーよ」

こいつらに絡まれたら前には進めない。
いや、進もうと思えば進めるが目立つことをするのは避けたい。

「アタシら今からカラオケ行くねん。ちょおアンタもきいや」

「行くかよ」

「ええやんなあボッスン」

「別に?」

『機嫌悪いなw』

前方を確認すれば、いつの間にか会長の姿は見えず慌ててその場を離れる。

「なんやどこ行くねん加藤ー」

「またなんか追ってんじゃねーの」


幸い、右も左も店のある商店街のような場所だったため、細道を通る用がない限り会長達は前方にいるわけで。

見つからないように慎重に、かつ急いで人混みをかきわけるように進む。

暫くすると、会長達が洒落た外観の店に入っていったのが見えた。面積はそこまで大きくなさそうだが、ガラス張りで中が見えた。

アクセサリーショップ?

オレは向かい側の店の中から目を凝らしてその店を覗いた。
人を惹き付けるためにディスプレイされたシルバーリングやネックレスが見えた。

人通りが少し途切れた頃だ。
数秒、向こう側がはっきりと見れた。
笑顔の会長と、ネックレスを手にしている安形がオレの目に映った。
見間違いだと信じたい。


数分後、店を出ていった二人を追うことはせずそのままそのアクセサリーショップに入ってレジにいる店員に問い詰めた。

「さっきの高校生、何買っていきましたか」

怪しまれないように言ったつもりだ。
こんなこと聞くやつ刑事しかいねーだろうな。

「失礼ですが、知り合いか何かでしょうか?」

「兄弟です」

平気で適当に嘘をつく自分に少し嫌気が差した。

「そうなんですか」

店員はレジから離れ、並べられているネックレスを手にとった。

「こちらですね」

差し出されたそれは、十字架を基調とし装飾を施された地味でも派手でもないものだった。

「ありがとうございました」

急いで店を出て、来た道を戻る。
会長は、どこだ。






来た道をそのまま戻るとしたら、会長はまた学校付近を通るはずだ。
先回りをして、いつも通り一緒に下校しよう。



「会長!」

会長が校門の前を通りすぎたのを確認して、呼び止める。
時間が時間だけに下校中の生徒も数人しかいなかった。

「キリ…?どうしたまだ校内に残っていたのか」

「いつの間にかこんな時間になってまして…すいません」

「謝ることはない。まだギリギリ最終下校時刻ではないからな」

「会長はどちらへいらしたのですか」

「買い物だ」

「何をご購入されたんですか」

「いや…」

「言いづらい事でしたら結構ですよ」

「その、」

「帰りましょうか。お送りします」

歩き出そうとしたが、会長がオレを呼び止めた。

「キ、キリ」

「はい」

「これ」

「なんですか?」

「キリに」

「オレに?」

「これを買いに行ってたんだ。その、受け取ってくれるか?」

差し出されたそれは、プレゼント用に包装されているわけでもなく、さっきの店のロゴが入った小さな袋だった。

「勿論です!オレなんかのためにありがとうございます!」

「良かった」

「開けてもいいですか?」

「ああ」

何が入っているかは分かっていたが、少し心が弾んだ。
軽く留められたテープを剥がすだけで中身が見えた。

「ボクはその、恋人らしいことをした記憶がない。これでは今までと何も変わらないんじゃないかと思って」

「スゴく嬉しいです!」

「つけてくれるか?」

「自分ではつけづらいので手伝ってくださると有り難いです」

「そうだな」

ネックレスを会長に預けた。
後ろからつけて貰うつもりだったが、その前に会長が一歩オレに近付いた。
どうやら前からつけてくださるようだ。
ネックレスを持った会長の腕が後ろに回された。
他人から見たらまるで抱き締められているかのようだ。
つけやすいように少し屈んで、出来るだけ首を動かさないようにしていた。

「よし」

離れようとした会長をふと見れば、首元に不似合いなそれを見つけた。

「ボクと違ってよく似合うな…かっこいい」

「会長、あの」

「…ペアネックレスというやつだ」

思わず会長を抱き締めた。
今度はオレから腕を回して。


「キ、キリ、こんなところで抱き付くな…!」

「会長」

「な、なんだ?」

「これでオレはずっと会長のものですね」

「…ああ」






[end]

忠 犬 ど こ い っ た 。
もっとこう、179話みたいな雰囲気のものを書きたかったんですが。

言い訳は更新履歴のほうでするとしよう。


いつも文を書く時はテンポ良く進めようとしてしまうので、
まだお互い秘密な出来事が残ったままになりましたが、それはそれでいいんじゃないかと思ってます。

では、リクエストありがとうございました!




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