ミックスハート


「アイツら遅くなるって」

この学校に通うのも数えられる程少ない日数になり、思い出づくりにということとクリスマスが近いということと冬休みに突入するということで軽くパーティーでもしようということになっていた。どういう経緯だったか生徒会の連中も来ることになっていて、彼らが来る前に一通り準備を終えた頃だった。どうやら生徒会業務があるらしく少し遅れると連絡があった。

「ほな先食べよか」
「だな」

机に並べられたお菓子の類を開封し、ジュースの注がれたコップで乾杯する。

「カンパーイ!」

片付けが楽な方がいい、と紙コップのそれを用意していて、乾杯とコップ同士を合わせても音はしなかった。

「うぇ…まっず!」
「なんやこれ!?」
『これはチュウさんがくれたジュースじゃないか?』
「え、ちょ、どうなんの?」
「もうイヤやこの展開」

不味い飲み物イコールチュウさんの薬という結び付きが出来てしまう程お馴染みのパターンだったが毎回効能の違う薬のことが多く、薬を飲んでしまった後の反応には慣れなかった。



「なんやこれ!?え、声低っ」
『それは俺の声だ』
「お前タイピングおっそ!」
「スイッチの肉声!?つか同じ声が二人とか紛らわしいんだけど!」
「ちょお一旦整理しよ」
『ああ』
「アタシがスイッチの姿で、ボッスンがアタシの姿で、スイッチがボッスンの姿ってことやな?」
『そういうことだ』
「そういうことだじゃねーよ!お前なんでオレの姿でゴンセーオンセー使ってんだよ!」
『合成音声i』
「ミスんなや!」
『中身はオレだからな。喋るにはこれがいる』
事情を知らない知り合いがこの光景を見れば驚くだろう。常にパソコンで会話するはずのスイッチが関西弁で喋っていて、普段しないような行儀の悪い格好で座っているヒメコがいて、パソコンを操るボッスンがいるのだから。つまりは3人の身体が入れ替わった状態なのだ。

「おいおいどうするよ!?」
「まずはチュウさん呼びに行かなアカンやろ」
「椿たち来ちまうぞ」
「ほな取り敢えずここは誰に会っても大丈夫そうなスイッチ、チュウさん呼んできいや」
『了解。あ、』
「あ?なんや?」

ドアを開けたスイッチの前には椿と加藤がいて、続いて女子3人も此方に向かっていた。

『やあ、生徒会諸君』
「何故キミが笛吹のパソコンを使っているんだ」
「オレはこっちだ」
椿は目の前のボッスンの姿ではなく、部室の奥で声を発したヒメコに目を向ける。
「キミは鬼塚だろう?」
「アタシはこっちや」
「貴様らはボクをからかいたいのか?」
「ちゃうねん!チュウさんの薬のせいでこうなっとんねん」
「中馬先生?」
「今はオレがヒメコで、ヒメコがスイッチで、スイッチがオレなんだ」
「…ややこしいな」

「ちょお加藤、急いでチュウさん呼んで来てくれへんか?」
「なんでオレが」
「キリ、」
「分かりました」
キリは椿の一言で行ってきます、とあっという間に姿を消した。


「連れて来ました」
「早っ」
「あれ?俺今瞬間移動する薬作ったのか?」
「チュウさん状況理解出来てへんぞ!」
「チュウさん!」
「おお、なんだどうしたヒメコ」
「いやヒメコじゃねーんだけど…じゃなくて!これチュウさんの薬だろ!」
ヒメコの姿をしたボッスンはチュウさんの目の前に薬の入った紙コップを差し出した。

「ああ、それな…ハハッ…」
「ハハッてなんだよ!治るんだよな?これ?」
「多分な」
「なんでいっつも曖昧なんだよ!」
「で、どうやったら治るん?」
「もう一回飲めば多分治るぞ。多分」
「だから多分ってなんだよ!」
「2人だったら一回で治る確率が高いが3人となると難しいんだよ」
「どういうことやねん」
「もう一回飲んで、今の状態の逆のボッスン→スイッチ→ヒメコか元の自分かの2パターンあるみたいでな…」
「何回も飲めばいい話だろ?マズいけど」
「同時に飲まねーと意味ないからな」
「よし、じゃあ飲むか」
「こんなん何回も飲まなアカンとか何の罰ゲームやねん」

各々先程の紙コップを手に持ち、ボッスンのせーのという合図と共に口に含み流し込んだ。

「よし!これで元に……あれ?」
「あら?なんだか急に景色が変わりましたわ」
「む、なんだこれは」
「おい藤崎!どういうことだこれは!」
「オレだって知らねーよ!」
『ボッスン、これだ』
「おお、スイッチか?」
デージーの姿のスイッチが差したテーブルの上には並べた覚えのない紙コップが5つあり、そこには自分たちが飲んだものと同じ色をしたものが入っていた。

「まさかお前らも飲んだのか?」
「どうやらそういうことみたいだな」

一人ずつ名乗っていったところ、どうやら、ヒメコ→椿→ボッスン→キリ→スイッチ→デージー→ミモリン→ウサミというように入れ替わってしまったらしい。

「おいどうすんだよこれ!あと何回飲んだら元に戻んだよ!」
「まあ、頑張れよ」
「アンタのせいでこうなったんだぞ!」
「オレちょっとタバコ買いに行って来るから」
「他人事だと思いやがって!」
「飲んだお前らが悪い」
「こんなもん作るチュウさんが一番悪いっつーの!」
「ボッスン、はよ飲もう!時間経つとキツいわこれ」
「だな…」




ミックスハート



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