クイズにしてやろう


授業中、椅子の下から尻に響く衝撃は特に前触れもなくやってくる。
コンコン、と周りにうるさくならない程度のそれは後ろの席のヒメコが足で蹴っているものだ。
小学生か。突っ張ってる太ももとコンコンやってる爪先が痛くなるぞ。
先生が黒板に字を書き連ねてるのを確認して後ろを向く。

「…何」

「ヒマやな」

「そうだな」

まあオレも真面目に授業を聞いていたわけじゃないけど聞いてるふりしてねーとなあ、と再び前を向く。
チラッと見えたヒメコの後ろのスイッチは何やらキーボードを打っているようだった。アイツ遊んでんのかよ。

机の上に広げられている教科書をなんとなく捲れば前の授業で使ったプリントが挟まっていた。折り紙はさすがにバレそうだからなんか描くか。

机の中からノートを出し、バレないようにプリントの両端に教科書とノートを置いた。

(いざ書こうとなると何書いたらいいか分かんねえな…)

(腹減ったしなー…オムライスとか…っ…!?)

急に背中に擽ったい何かが触れた。
いや、何かなんて分かり切っている。ヒメコだ。
もぞもぞと背中を這う指は何か伝えている。
文字当てか。また小学生レベルな…。

あ・の・お・つ・さ・ん・わ・き・あ・せ・ひ・ど・い

(あのオッサンわき汗ひどい?どこ見てんだよお前…)
オッサ…先生の方に目を向ければ先生は教卓の上に置かれた資料を見ながら黒板に何かを書き始めた。脇の部分は確かに色が変わっていた。
オレはプリントの端をちぎってヒメコへの手紙を書く。
ツッコんでやれよ、っと。
そのまま手だけを後ろに回して手紙を渡して返事を待つ。さすがのヒメコでも授業中に教師にツッコミなんか入れないだろうなと思いながら適当に板書して時間を潰した。

肩越しに渡ってきた手紙を広げれば、なんでやねんと書かれていて、いやまあそうだけど、と思いながら残りの数十分は先生が手を上げる回数でも数えて過ごそうと思った。



クイズにしてやろう



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