ごめんね


(辛いなんて、そんなまさか)

学園生活も終わるかという頃、最後の最後で彼との距離を詰め過ぎた。
安形の為に部室に足を運んで話をして以来、卒業までの数日は暇だからと度々訪れて。
気付けば藤崎のことばかり頭にあった。

卒業式は明日で。
明日はもう顔を合わせる時間なんてないだろうと部室に向かった。
もう帰宅した後だろうと思いながらも少しだけ期待をして。
案の定、電気はついていなかった。
だから、中を覗くだけ覗いて帰ろう。そう思ったのに。

(なんでいるんだよ…)

藤崎は笛吹の机に突っ伏して寝ていた。
何か作業中だったのだろうか。机の上や畳の上に様々な文具が散らかっていた。

(写真…?)

突っ伏している藤崎の下に写真らしきものが埋まっている。
写真を強引に引っ張れば、藤崎が少し呻いた。

(起きるかな?)

暫く様子を見たがどうやら起きる気配はない。
そのかわり先程見えなかった顔がこちらを向いている。
次に起きた時はすぐに分かるようになってしまった。

(別にこんなにこそこそする理由もないんだけど…)

手に取った写真に目をやれば、それはいつだったかに撮った見覚えのある写真で。
再び藤崎に目を向ければ、その下にはデコレーションされた画用紙があった。

(なんだ…?)

逆側から覗き込めばそこには榛葉さんへと書かれていて。
畳の上に目をやればそこには安形の名前の書かれたものもあって。

どうやら自分たちのために何か作っている最中だったらしい。
こんなサプライズは予想していなかった。
これはますますここにいてはマズい。

写真を元に戻して、ドアの前に立って部室を見渡して。
ここに来るのももう最後なんだと思うと胸に込み上げる思いが抑えきれなくなる。

(こんなはずじゃなかったのになあ)

音を立てないようにそっと藤崎に近付いて、

「ごめんね」

触れるだけのキスをした。


いつかまたどこかで会うようなことがあったら、
その時はちゃんと思いを伝えよう。



「バイバイ、藤崎」




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