輝く笑顔と




部室のドアを開ければ、窓から入る風にカーテンが揺れていた。
そのカーテンの下に隠れるようにしてヒメコは寝ていた。

そっと近付いてみれば、顔は腕で隠れていてよく見えないがどこからか聞こえてくる蝉の鳴き声に混じって寝息が聞こえた。

見つめていれば、ん、と薄く開かれた唇から唸るような声が漏れ、顔にかかっていた腕がするりと横に落ちた。

眉間にはシワが寄っていて、悪い夢でも見ているのかと思ったがきっと暑さのせいだろう。額に張り付いていた前髪に指先で触れ、横に流すようにした。

おとなしいヒメコを見ているとなんだか落ち着かなくて、やっぱり笑った顔が一番だなあとふとヒメコの口元に手が伸びた。

(あ、グロスついた…)

唇に触れた人差し指にはキラキラと光るグロスがついていて、その指で他の部分に触れないように気をつけながら別の指で口角を無理矢理あげてみる。

(…やっぱ不自然だな)


ん、と再び声を上げたヒメコにびっくりして後ろにあった机にぶつかった。

「んあ…?なんや、どしたん?」

「いや、なんでもねえよ!」

「そか」

ああ、アタシ寝てもーたんやなぁ、と畳から降り伸びをするヒメコはいつも通りだった。

「ちょおジュース買ってくるわ」

そう言ってあっという間に部室から姿を消したヒメコを見送ったままドアを見つめていた。

ふと唇の端を掻けば、何かついた感触がして近くにあったヒメコの鏡を借りて見ればそこにはキラキラしたものがついていた。





輝く笑顔と





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