触れたくなるのは



中庭の掃除が終わりベンチで一息ついていたところだった。

「疲れたー」

昨晩、遅くまでゲームをやっていたせいで睡魔が襲ってきていた。
帰ったらまた昨日の続きでもやろうと考えていたがこれは一旦寝た方がいいかもしれない。

「ん?」

睡魔と闘っていて気付かなかったのかいつも頭にある帽子の感覚が無くなっていた。
てっきりヒメコかスイッチだと思っていたオレは振り返ったそこにいた人物に驚いた。

「やあ」

「なんだよ」

「見かけたからつい」

「つい人の帽子を取りたくなるのかよ」

「いやほら、何て言うか藤崎って動物っぽいじゃん」

「いきなりなんだよ。オレが馬面だとでも言いたいのか」

「そうじゃなくて。こう、撫で回したくなるというかさ、」

「気持ち悪いぞ」

「酷いな!いやだからそうじゃなくてさ、」

頭にスッと伸ばされた手がくしゃくしゃと髪を乱していった。

「うおっ」

「こういうこと」

「どういうことだよ」

「ムツゴロウさんに訊いてみたら?」

「意味分かんねーよ」

「じゃあオレのも触ってみたら?」

「は?」

「ほら、」

無理矢理手を持っていかれたがその感触になんとなく言っている事が分かった気がした。

「なんかアレだな、鳥とか棲めそう」

「鳥!?なんで!?」

「ハムスターとかでもいいかもしんねーな」

「いや確かにムツゴロウさんに訊いてみたらって言ったけどそういうことじゃなくて!」

「どういうことだよ」

「藤崎は、もし野良猫とか捨て猫とか見たらどうする?」

「ネコ?」

「うん。ネコ」

「まあ、近付くだろうな」

「触りたくなるでしょ?」

「まあ、可愛いしな」

「そういうこと。藤崎を見かけると触りたくなる」

「は?」

そう言いながらまたオレの髪に指を絡ませるコイツの考えていることはよく分からなかった。

「じゃあ、オレはそろそろ生徒会だから」

「…そうか」

榛葉は、じゃあまたねと微笑みながら校舎へ向かっていった。

「なんなんだよ…」





触れたくなるのは





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