忠犬の誓い



「お怪我はございませんか?」

地面にへたりこんでいるボクに差し伸べられた右手は血が滲んでいて少し痛々しかった。

「怪我をしているのは君だ!」

「っ…失念しておりました。申し訳ありません。では、左で」

「そうじゃない!」

「お気になさらないでください。オレは会長をお守りするためにあるのですから」

「会長会長と、怪我まで負って…そんなに長いものに巻かれたいか!そんなもののために身体を張るのか!」

少し強く言ってしまっただろうかと悩んでいれば跪いたキリにいきなり脚を掴まれた。

「なっ…何を」

キリはそのまま爪先に顔を近付けた。

「爪先へのキスは忠誠の証です。オレはなんのためにここにいるのか。それはただただ会長への忠誠心です。オレを救ってくれた敬愛すべき恩人、それは他ならぬ貴方なのです。…なのにこの失態…全身全霊を持って挽回させていただく所存です。ですから、ですからどうか、どうか…お側にいさせていただけませんか…?」

真剣に言葉を連ねるその必死な顔にボクが否定の言葉を告げる隙は無かった。

「…好きにしろ」

「良いのですか?こんなオレでも」

「どんなキミだろうと好きな場所で好きに生きればいい」

「会長…ありがとうございます。不束者ですが宜しくお願いいたします」





忠犬の誓い
(いや、足を放せ…)





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