一番の宝物2



僕は1日中、考えていた。
藤崎のことを。
きっと、今までで一番。

明日はお通夜だとか明後日は葬式だとかそんな現実は頭にない。



昔から喧嘩してばかりだったな、と思い出した。
生まれた時は同じだった筈なのに、僕と藤崎の記憶にある初対面は高校生の頃だ。
初対面だというのにいきなり口論になって、それがずっと続いて。
最近ではその喧嘩も少なくなっていたと思う。
いや、そういえば昨日も電気を点けっ放しで寝ていた藤崎を叩き起こして口論になったんだった。


(そうか…もうそんなこともない、のか…)


せっかく家族らしく、過ごせる気がしていたのに。
一緒にご飯を食べて、テレビを見たりして。
望んでいた普通の日常は、もう過ごせない。




会ってみたいと思わねえ?

前にそう聞かれたことがあった。
何が、と聞き返すようなことではない。両親に、だ。
会えるわけがない。
それは僕も藤崎も分かっている。

つまりは死んだら会えるのか、ということだ。

だから…逢いたいからって死ぬなよ、と約束をした筈なのに。

藤崎は、両親に逢えたのだろうか…

そうか…ボクもここからいなくなれば両親に、逢えるのか…

「ボクも死ねば…」

“死ぬなよ”

「っ…」

あの時の約束が脳を過る。
そうだ。
僕まで死んでしまったら、意味がないじゃないか。

だいたい、そんな死に方じゃ、きっと逢えない。

約束は、守る。
例え一人で辛くても死んではいけない。
それでは意味がない。
生きたかった筈の両親と、藤崎。
つまりは家族の分まで僕が生きなきゃダメなんだ。

寂しいけれど、その寂しさは引きずるべきではない。
悲しい顔をしていても、きっと両親や藤崎は喜ばないからだ。
楽しく、生きる。
そしていつか、死ぬ時がくる。
その時には何も思い残すことがないような幸せな人生を送ることが、家族のためだ。

「藤崎」

茜さんから貰った家族写真を見つめ意志を固める。
僕と藤崎。仏壇の前で撮った写真。
唯一の、家族4人の写真。
僕と藤崎はぎこちない表情だけど、きっと両親は笑顔の、大切な家族写真。



そうだ。
僕は、一人じゃないんだ。
きっと見ていてくれる。
いつだってそばにいてくれる。
寂しいはずなのに、こんなにも暖かい。


藤崎、
僕は家族のために、
精一杯生きるから。
いつか死んだ時に、
家族に逢えるように――


だから、見守っていてくれ







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