∵ いつもより近い距離

「だから無茶すんなって言ったのに」

怪我をしていた右足を庇いながらも乱闘を収める為に出向き左足を痛めたらしい。

「ほなアタシが行かんかったらどうするつもりやったんや」
「オレ一人でなんとかなったっつーの」
「嘘つけ」

「とりあえず保健室行くか」
立てるか?と手を貸し立ち上がるが、上手く足に力が入らないらしくふらついた。

「歩けるか?」
「ちょお時間かかりそうやけど」
ひょこひょこと怪我をした時独特の歩き方で進もうとするヒメコの前にしゃがむ。
「ほら乗れよ」
「は?」
「そんなんじゃ余計足痛めるっつーの」
次乱闘起きたら誰が収めんだよ、と背後に立ち尽くすヒメコに後ろ手を出す。

「…さっきお前一人で十分て言うたくせに」
背中にヒメコの体重が掛かり、肩に手が掛かった。
「立つぞ」
膝裏に手を回し足を踏ん張って立つ。

「よろけんなや」
「慣れてねーんだからしょうがねえだろ」
「そうか。すまん。ありがとうな」

いつもより近い距離で聞こえる声に新鮮さを感じながら保健室へ向かった。



いつもより近い距離

2012.05.27

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