∵ 絆創膏ありがとう

「いっ…!」
静まり返っていた室内に突然椿の声が響いた。

「どうした?」
棚に向き合っている椿のもとへ行き、視線を辿れば指から血が出ているのが見えた。

「大丈夫か?」
「ああ、ちょっとバインダーで挟んだだけだ」

「ちょっと待ってろ…確か…」
ポケットを漁り目的の物を探す。ペロキャンらしきものが出てきたが恐らくヒメコが勝手に入れたものだろう。
「あった!ほらよ」
昨日、依頼中に擦り剥いた膝の為にヒメコから貰っていた絆創膏を渡す。

「む、必要ない」
「なんでだよ」
「そんなものに頼っていたら治るものも治らないぞ」
「そういう問題じゃねーだろ。いいから貼っとけよ」
包装を剥がし、椿の指に強引に絆創膏を巻いた。少し見た目が悪くなってしまったが傷口は隠れたのでよしとしよう。

「…礼は言わんぞ」
「いや言えよ」
「…」
「…」
「…」
「…お前ホント頑固だな」
「…」
「…」



絆創膏ありがとう

2012.05.03

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