∵ tell a lie

春休みだからと少し遅めに起床し、ワイドショーを眺めながら朝食を摂っていたところだった。
テーブルの上に置いていたケータイが着信を知らせた。
そろそろ着信音変えるかなと思いながら手に取りディスプレイを覗けば見慣れた名前が表示されていた。

「お、ボッスンからや。どうせ、ヒメコ今ヒマかー?とか言われるんやろなあ」

今日は何も予定が無いことを確認し、通話ボタンを押し耳に当てた。
「朝っぱらからなんやねん」
『大変だ』
どうやら遊びの誘いではないらしい。トーンが明らかにシリアスである。

「どしたん?」
『オレ…』
「…」
『今宇宙人に遭ったんだ』
「…なんて?」
今時そんなこと言う高校生がいるのかと少し呆れた。まあボッスンらしいといえばらしいが。

『だから宇宙人だよ宇宙人!』
「下手か!へったくそやなお前!」
『何がヘタ?あ、お前ウソだと思ってんだろ!』
「当たり前やろ!今日何の日や思っとんねん!どんな大事言うたって誰も信じてくれへんに決まっとるやんけ」
『ちぇ、なんだよーヒメコの事だからエイプリルフールなんか忘れてると思ったぜ』
「アンタのつくウソが幼稚過ぎんねん。なんや宇宙人て。せめて宝くじ1等当たったーとかにしとけや」
『当たるわけねーだろ』
「だからウソや言うとんねん!」

『じゃあちょっとスイッチにもウソついてみようぜ』
相当暇なのか。もしかして手当たり次第に電話を掛けてウソをついているのだろうか。
「今度はなんて言うつもりや?」
『宝くじ1等当たったぜーって』
「お前ホンマアホやろ」
『なんで!?』
「もっとリアリティーあるウソつけ言うとんねん」
『例えば?』
「そんなん自分で考えろや」
『そうだなー…あ、こういうのはどうだ?』
「なんや言うてみ」

『オレとヒメコは付き合ってまーす的な』
「な…っ」
『ジンにもサーヤにも疑われたくらいだしよー』
「…」
『どうだ?』
「あ、アカン…!」
『ダメかー』
「ちゃ、ちゃうねん…そういうことやなくて」
消え入りそうな声で口から出た言葉が自分でもよく分からなかった。

『なんだよー…じゃあ他には…明日引っ越すんだーとかは?』
「え、ええんちゃう…?」
『マジ?これでスイッチ信じる?』
「…せやな」

『じゃあちょっとオレスイッチに電話するわ!』
「お、おう」
『じゃあな!』
「おお…」
プツッ、ツーツー…という電話の切れた音が耳元で鳴り響いていた。

「なんやねんアイツはホンマに…」



tell a lie

2012.04.01

( prev : top : next )
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -