∵ 自転車二人旅

チリンチリンと自転車のベルが聞こえて振り向けば見知った人物が片手運転をしながら手を振っていた。

「なんだヒメコか」
「こんなとこで何しとんアンタ」
「お前こそ」
「アタシはあれや、おつかいの帰りや」
「自転車で?」
「せや。天気もええしたまには乗ったろー思って」
「もう帰んの?」
「あとはコンビニ寄るだけや」
「ちょうどいい!」
「は?」
「乗せてってください!」
「なんでやねん」
「何軒探しても見つかんねーんだよ!」
「何がや」
「限定みかんゼリーに決まってんだろ!」
「いや知らんがな」
「お前どこのコンビニ行くつもりだ?」
「おお待て待て勝手に乗ろうとすな!」
「この辺のコンビニは全部見たからよ、もう少し遠くのコンビニならあると思うんだよな」
「なんで話進めとるん」
「さあ行け!レッツゴー!」
「…しゃーないなあ…んじゃあ最初は…とか言うと思ったかドアホ!」
「うええ!?何?ダメなの!?」
「そんなトントン拍子に話進むと思ったんか!」
「トントントントンワシントン!」
「…」
「…」
「…スベっとんで」
「ツッこんでくんないの!?」
「毎回ツッこむと思うなよ」
「すいません」

「奢り」
「は?」
「何か奢れ言うとんねん」
「はいはい分かりましたよー」
「で、どこのコンビニや?」
「ローソンだけど」
「ん。ほな、行こか」

どうやら連れて行ってくれるらしい。
大人しく荷台に乗り直すと、ヒメコが自転車を漕ぎ出した。


「…」
「…」
「…なあ、」
「あ?」
「普通逆ちゃう?」
「何が?」
「普通男が漕ぐもんやろ!」
「そうだな」
「ほなアンタが漕げや」
「いやオレよりお前の方が体力あるだろ」
「そういう問題ちゃうやろ!」
「乗り慣れないチャリで二人乗りなんかしたらぜってー転ぶよ!?」
「そん時はそん時や」
「マジか」
「ほれ、降りろや」
「しょーがねえなあ」
ヒメコと交代するために荷台から降りた。

「ケガしてもオレのせいにすんなよ」
「慰謝料くらいは払うて貰うで」
「ケガすること前提かよ」
「アンタが言い出したんやろが」
「お前が漕いでくんねーからだろが」
「もうええわ。はよ行こ」
「よっこらせっと…サドル高っ」
「短足か」
「なんだと!」
「だって足届かへんのやろ?」
「いやさすがに届くよ?ちゃんと地に足ついてるよ?お前より身長高えんだから」
「じゃあサドル高ないやろ」
「いやまあそうなんだけどオレの自転車と感覚が違う」
「そらそうやろな。ほら行くでー」
ヒメコが後ろに乗り手を振り上げたのを合図にペダルを漕ぎ出した。
やはり乗り慣れないが春の日射しと風が心地よかった。



自転車二人旅

2012.03.23

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