∵ ミュージックプレイヤー

キリや藤崎のそれに憧れて買ってしまったが、操作などはまったく分からなかった。

恥ずかしながらキリにその事を話せば、そのままキリの家に行き音楽を入れて貰うことになった。




「何か入れたい曲とかありますか?」
「いや、キリに任せる」
「そうですか。では、とりあえずオレのやつに入ってる曲入れますね」
そう言ってパソコンを操作するキリの後ろ姿と部屋を眺めていたが落ち着かなかった。
横から画面を覗いて見ても、なんだかよく分からない。

「難しくないのか?」
「一度覚えたら簡単ですよ。やってみますか?オレ教えますし」

画面の前に誘導された。
「えっと…」
「マウスに手を添えてください」
「ん、ああ」
「ではまずここをクリックして、」
「キ、キリ…」
「なんですか?」

「その、近くないか…」
キリはボクの背中にくっついていて、マウスに添えたボクの手の上からキリの手が重なっていた。
おまけに画面を覗く為に少し横にずらされた顔がボクの耳元にあった。

「こうしないと教えられません」
「横から指示してくれればいいんじゃないか…?」
「ダメです!」
「はあ…」
「会長から離れたくありません!」
「…なんでもいいから早く教えてくれ」
「はい!」



それからボクは少しずつ曲の取り方や入れ方などを教わっていった。

「これもいい曲だな」
「オレの今一番好きな曲です」
「キリはいいセンスをしているんだな」
「それはきっと会長の趣味とオレの趣味が同じなんですよ!」
「そうなのか?」

「オレが好きなものを好きと言って下さる会長がオレは好きです!」
「き、急にどうしたんだ!?」
後ろから回された腕にぎゅっと力を込められる。
「嬉しいんです。会長がオレに頼ってくれて」

「…」
「またいつでもオレを頼ってくださいね」
「…ああ」



ミュージックプレイヤー

2012.03.23

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