∵ おめでとうございます

安椿





校門の前に集合の約束をしたが、生徒会室に忘れ物をしたのを思い出して取りに来た。

ドアを開ければ、そこには先程式で見たその人がいた。

「よお」
「どうしたんですか」
「まあ、見納めってやつ」
安形さんは昔のように会長席に座って室内を眺めていた。

「いいんですか、こんなところにいて」
「そうだなー今頃みんなが探してるかもなぁ」
「そうですよ、早く、行った方がいいです」
早く、ここから見送らなくては

「じゃ、もうそろそろ行くかなぁ」

これでもう、ここで会うことは無い
「…会長、」
「おほっ今更会長呼びか?」

「卒業…卒業、しないでください」
安形さんがいない学校生活を考えたら涙が止まらなかった。泣かない約束をしたばかりなのに。

「…まったく」
「昼寝しててもいいですから、会議をサボってもいいから、卒業、しないで…っ」
「…寂しいか?」
「はい…」
「そうだなあ…じゃあ、」
安形さんは棚からファイルを取り出し、中から紙のような物を出した。
「これやるよ。オレとミチルが1年の時の写真。お前より若いぜ」
「あんまり、変わってませんね…っ」
「あと、これも」
「何ですか?」
手を取られ、手のひらを上にされ紙くずが乗せられた。
「ゴミ」
「なっ…!ふざけないでくださいっ…!」
「わりぃわりぃ。椿が泣くからよぉ…ほら、目から椿油が出てんぞ」
「安形さん!」
「泣くか笑うか怒るか一つにしろよ」
いつものように少し乱暴に頭を撫でられた。

「笑った方がいいですか…?」
「そりゃあ」
「そうですね…じゃあ、」

安形さんの唇に口づけをし、笑ってみせた。

「これでいいですか?」
「上出来だ」



おめでとうございます

2012.03.19

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