∵ とけた靴ひも

「普通逆やろ!なんでアタシがこんな重たいもん持たなアカンねん!」
ヒメコは前が見えない程の大きさのダンボールを抱えていた。
チュウさんからの頼みごとでこれを外の倉庫に運ぶことになっている。

「あ?しょうがねーだろオレ筋肉痛なんだから」
「アンタが普段から運動してへんからやろ」
「だから運動しようと思って腕立てしたらこうなったんだよ」
「日頃から運動せえ言うとんねん」

「あ、そこ段差あるぞ」
「分かっとるわ」
横から覗くように足下を見るヒメコはずっと不機嫌だ。

「そこバナナの皮落ちてんぞ」
「うそつけ!」
「ホントだっつの」
「んなわけないやろ」
「3歩先行けば分かる」
「仮にもしあったとしたらアタシ絶対コケるやんか」
「そうだな」

「…」
「…」
「…やっぱウソやないか!」
「いやいやあっただろうが!お前が奇跡的に踏まなかっただけだ!」
「だいたいこんなことなっとんのチュウさんとアンタのせいやで!?なんで女子にこんなん運ばすん!?頭おかしいやろ!」

「あ、」
「あ?」
「ちょっとストップ」
「なんや交代してくれる気になったんか?」
「いや、違うけど」
「違うんかい」
「左足、前に出して」
「は?」
「早く」
「なんで」
「靴ひも解けてんだよ」
「…おお」

差し出されたヒメコの左足の前にしゃがんだボッスンは靴ひもを手際よく結んだ。
「ほらよ」
「…おお」
「ほら行くぞ」
「やっぱダンボールは持ってくれへんのかい」



とけた靴ひも

2012.03.14

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