∵ 1年D組

安キリ





忘れ物を取りに自分の教室に来ていたら、見知った人物が現れた。

「一年の教室なんかに何の用だ」
「用っつーかまあ、思い出を巡りに来た」
「は?」

「よっこらせっと」
ずかずかと室内に入ってきた安形はそのまま椅子に座った。
「おい、何でオレの席に座ってんだ」
「お前D組なの?」
「じゃなかったらここにいねーよ」
「かっかっかそれもそうか…しっかし懐かしいなー」
そう言いながら安形は室内を見回した。

「教室なんかどこも一緒じゃねえのか」
「あの黒板の傷はオレがつけた」
「何やってんだよ」

「あと、黒板の下の壁とそこの隅と廊下のロッカーにも落書きがあるはずなんだけどよ…あ、廊下のロッカーってなんかダジャレっぽくね?」
「…」
そのまま廊下に出た安形を追う。

「えーっとロッカーは確かミチルの使ってたとこに…」
「おい待て、」
勝手に開けようとしていた安形に声を掛け止める。
「そこはオレのロッカーだ」
「マジか!運命?」
「んなわけねーだろ偶然だ。だいたいそこは榛葉の使ってたロッカーなんだろ?」

「じゃあ彫るか」
「は?」
「オレとお前の相合い傘」
「ふざけてんじゃねえ」
「ふざけてはねえけど?」
「じゃあふざけろ」
「ふざけたら相合い傘じゃ済まねーけど?彫るだけじゃ済まねーよ?掘られ、」
「じゃあオレはアンタを埋める為の土を掘る」

「さっきからなんでお前そんなに冷てえの!?仮にも卒業生だぜ?」
「祝って欲しいのか?」
「まあ、」
「そのロッカー開けてみろ」
「何?もしかして花束とか出てきたりすんの?オレ泣くよ?」
「勝手に泣いてろ」

「じゃあ、開けるぞ」
ロッカーの戸に手を掛けた安形に声を掛ける。
「開けたら催涙ガスが出る仕掛けになっている」
「あぶねっ!なんだお前!?もう少しで開けるとこだったじゃねえか!」
「泣きたかったんじゃないのか」
「そうだけどちげえ!」



2012.03.07

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