∵ 丸めた紙とほうきで野球

掃除の前半が終わり、教室の後ろに下げた全員分の机を今度は前に持っていく。

「紙は…っと」
ボッスンは、いらないであろうプリントを丸めて固めていた。

「今日もいつものほうきやでー!」
ヒメコは掃除には適さないが振りかざすのには最適な箒を掃除ロッカーから取り出していた。

「今ボール作ってるから先に違うヤツでやっててくれ」
「はいよー!んじゃあ、これでいっか。スイッチバッターなー!ちゃんと打つんやでー」
ヒメコはスイッチに箒を渡し、スイッチはパソコンを首から外した。

「紙軽くて強く投げれへんから打てるやろ」
スイッチはドアのある廊下側、ヒメコは校庭の見える窓側へ移動した

「いくでー!」
ヒメコは紙のボールが飛ぶように優しく下から投げた。
スイッチはパンッ、と軽い音を立てて打ち返す。
「なんや…おもんないな」

「出来たぞ!見ろ!この硬いボール!」
教室の前側でボールを作っていたボッスンがタイミングよく声を上げた。

「パス」
前から飛んでくる紙のボールはそれなりにスピードがあり、これならバッターもピッチャーも楽しく出来そうだと思った。
「おお!ええなあこれ!ほなはよやろ!」
「じゃあオレピッチャーな」
ボッスンはスイッチのいたドア付近に移動した。

「スイッチバッターやる?」
『オレはいい』
「じゃあアタシバッターやな!来いボッスン!」
「オレの剛速球が打てると思うなよ!」
『そのセリフは打たれるフラグだぞ』
そう言ってボッスンが思い切り投げたボールは見事に打ち返された。
「なんやそんなんが剛速球かいな」
「ちくしょう!こうなったら次はオレが打つ!」
箒とボールを交換し、定位置に戻る。

「しゃあないから手加減してやるわ」
「手加減なんか無くても打てるっつーの」

「いくでー!」
ブンッと音を立てて飛んだボールは箒に当たって打ち返された。
「っしゃあ!」
「あっ!」
返ってきたボールは高過ぎて取れず、そのまま窓の外に飛んでいった。
「やべっ」

ボッスンが窓に駆け寄って下を見ると、人がいてボールを拾っていた。
「おーい!その紙ボール取ってくれー…あれ?」
「あ、椿や」
『睨んでるな』
「逃げるぞ!」
「あ、ちょお待ちボッスン!」



丸めた紙とほうきで野球

2012.03.04

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