∵ present for you 2 榛雛 朝、私はいつも通りに学校に向かった。 しかしいつも通りではないことが1つ。下駄箱のところに見慣れた人物がいた。 榛葉さんだ。 「おはよう」 「待ち伏せか?」 「まあ、そんなとこ。それよりさ、昨日のチョコ」 「見つけられなかっただろう?」 「これでしょ」 榛葉さんが鞄から取り出したのは、間違いなく昨日私が渡したチョコだった。 「…何故分かった」 「オレの推理力が優れてるから、かな」 「…そうか」 「でね、えーっと…はいこれ」 チョコを鞄に戻した榛葉さんは、鞄とは別に持っていた紙袋を差し出した。 「なんだこれは?もしかしてお返しのつもりか?」 「開けてみたら分かるよ」 紙袋を榛葉さんに預け、中の箱に手を掛ければ甘い匂いがした。ケーキだ。 「誕生日おめでとう、デージーちゃん」 「…ありがとう、と言いたいところだがなんだこれは」 「何ってケーキだけど」 「そうじゃない。この真ん中のヤツだ」 一人でも食べきれそうな小さなホールケーキは、生クリームは勿論、苺とメッセージの書いてあるチョコプレート、それにモイモイとムンムンと…何かの砂糖菓子が乗っている。 「ああ、それね。オレ。砂糖で作ったミチル人形。食べて?」 「噛み砕けばいいのか」 「ちょ!優しく食べてあげて!」 箱を片手で支えて、真ん中の榛葉さんらしいそれに歯を立てた。 「おいしい?」 「砂糖菓子はあまり好きじゃない。子供の頃食べたクリスマスケーキのサンタは不味かった記憶があるからな。でもまあ…これは食べれなくはない」 「よかった」 「…これが昨日のお返しじゃなく誕生日プレゼントなら、」 「ん?」 「ホワイトデーは三倍だからな」 照れを誤魔化しながらケーキの生クリームを指で掬って食べた。 present for you (もちろん。デージーちゃんのためなら…いくらでも用意するよ) 2012.02.15 |