∵ 対価

スイボス





「なあスイッチーそこの2巻取ってくれー」

畳の上に座って、背を窓際に預けていたボッスンは、手元のマンガに視線を落としたままオレに言った。
そのマンガの続きの巻がヒメコの机の上に置いてあったのが視界に入った。
因みにヒメコは日直で来るのが遅い。

『自分で動いたらどうだ』
「なんだよスイッチのほうがちけーじゃん」
ヒメコじゃないが、ボッスンをこのままダラダラさせておいたらどうなるか分からない。甘やかしてはダメなのだ。

「スイッチー」
『…』
「取ってー」
『…』
「…」
『…』
「取ってくれてもいいのによー」
『無償で取ってやるわけにはいかない』
「たかが物を取るくらいなのに対価がいるのかよ」
『普通に取ってやっても楽しくないからな』
「わけわかんねー」

『ボッスンは続きが読めて嬉しいだろうがオレはマンガにボッスンを取られているから楽しくない』
「なんだよ…」
『無償じゃなく、こちら側にも利益のある取引でなくては楽しくない。まあオレはボッスンに無償の愛を注いでいるがな』

「…」
『…』
「…う、上手いこと言ったと思うなよバーカ…!」
『照れたのかw』
「うるせー…!」




2011.10.23

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