∵ 砕く派?溶かす派?

室内にはキーボードの音と、紙の擦れる音と
自分の口内で時々歯に当たる飴の音がしていた。
静かだ。

そんな穏やかな眠くなるような放課後の部活。

朝コンビニで買った雑誌に目を通していた。
ペラッとページを捲る際、集中していた意識が少し緩む。
と、ふと視線を感じた。
前で画面と向き合う彼ではない別の視線。
横からの視線。
暇なのか。
構って欲しいのか。
それとも別の理由だろうか。

仕方なく話し掛ける。


「なんや人の顔ジロジロと」
「あ、いや、それ」
口元を指し示す先にあるのはきっと口内のロリポップだ。

「ペロキャンか?なんや欲しいんか?」
机の上にある別の飴を差し出す。

「いや、いらねーけど」
「じゃあなんやねん」
「…それ噛まねーの?」
「は?」
「フツー砕いちまうだろ」
「何言うとるん飴は舐めるもんやろ」

好きな飴なら尚更だ。

「そんな地味にペロペロしてらんねぇってフツー。なあ、スイッチ」
『普通の飴なら噛んでしまうが、ヒメコの食べている飴はペロキャン。ペロリポップというくらいだ。舐める方が正しいだろう』
「そうなんやて」
「おぉふ、そうか…」
「用はそんだけか?」
「え、あ…うん」




砕く派?溶かす派?
(その動く口が気になった)

2011.08.25

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